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第九十話 ページ41

笹塚先生からスタンプをもらい、私たちは再び歩き始めた。
まごうことなくいいペースである。なんて言ったって、一人の生徒ともすれ違っていない。確かに別のスタート地点から進んでいるグループもいるから絶対一位だとは言えないけれど、でもこれは上位確実だろう。
商品がなくとも勝負事に勝つのは大好きだ。
いつも悲観的な私にさえも勝機が見えているということがグループ全体に伝わっているのだろう。和樹くんも樹も千佳も、軽やかな足取りだ。むしろ軽くスキップすらしている。
だからきっと私たちは油断していたんだろう。期待せずに行きたいと言ったのは私自身なはずなのに。
きっと笹塚先生からの難問をクリアできて舞い上がっていたんだろう。あのあと樹にも和樹くんにも千佳にも褒められた。うれしくて舞い上がっていたんだろう。

「ねぇ、この道を行っちゃだめなの?」

それは確かにゴングを鳴らしていたはずだった。

「え、どれ?」

この山道には分かれ道や曲がり角があるたびにしつこいほどに道しるべが置いてある。万が一にでも迷子にならないようにだろう。高校生をなんだと思っているのかといいたいところだが、私たちみたいな生徒がいることを懸念しての設置だったんだろう。
私たちはあんなにもうるさく鳴り響いていたゴングを、ただ油断していた調子に乗っていたばかりに聞き逃して、いや、耳をふさいでいたんだ。
地図を持っている千佳が指さす先を見て私たちはすぐさま千佳の言いたいことを理解する。
次のチェックポイントまでの道が回り道だったのだ。しかもよく見ればいま私たちの目の前にある道は一直線に次のチェックポイントまで導いてくれる近道。通常なら五分くらいの距離をおよそ二分で済ませられる。
そのたった三分のために。

「えー危なくないか?森の中っぽいよ」
「大丈夫だろ。 危ない場所があったら事前に知らせてるだろうし、むしろそんな山の中をあの過保護教師陣が生徒たちだけで歩かせるはずねぇし」
「花盛りの高校生だしねー目の前にチャレンジがあったら挑戦しちゃうような血気盛んなやつばかり」
「そう、だよね……」

たかが三分、されど三分。この三分で一位と二位に分かれるのかもしれない。
私たちはいまだに不安そうな顔をする和樹くんを押し切って、森の中の道へと入っていった。

「うわーくっら」
「足元気を付けろよ」

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設定タグ:ツンデレ , ドS , オリジナル   
作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ayakaさん» Rの要素ございました? (2020年6月25日 14時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
ayaka - [R]つけてください (2020年6月24日 20時) (レス) id: 6bf9ec98ce (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ゆうきさん» あぁああうれしいです!全力できゅんっと来るような描写をさせていただきます…無駄に多く長い小説をすべて読んでいただき感激のあまり…いや本当に感激です!(語彙力が足りない)ありがとうございます、頑張らせていただきます!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - いか糖さん» 本当に長くなりそうなので飽きないって言ってくださってうれしいです……!ワンパターン・テンプレばかりの小説だというのにそんなことを言って下さるなんて…!頑張ります!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - コメント失礼します!先生かっこよすぎませんか!?一話から続けて読んでいますが、先生の一つ一つの動作にキュンキュンさせられてます!こんな先生本当にいたらいいのにな…更新がんばってください!楽しみにしています! (2017年6月11日 15時) (レス) id: 6c9139a3b2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:   
作成日時:2014年11月14日 20時

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