第八十六話 ページ37
「本日はお日柄もよく――」
空を仰げば曇り空だ。多分会長は台本から読んでるわけじゃない、心の底から曇天がお日柄いいと思って言っている。私も同感ですけどね。
会長は一言二言典型的な開会式のようなセリフをみんなの前に立って言う。ちなみに私はいつかの鬼ごっこ歓迎会の時よろしく他の学級委員長と肩を並べて全校生徒の前に立っている。
「では、班ごとに分かれて班長の指示に従い遠足を開始してください!」
勿論班長は私ですけどもね。
ととと、とまるで小動物が走ってくるように寄ってきた千佳たちを見て、私はその場に立ち尽くす。
三人が集まったのを見て、左腕をあげて腕時計を見てみた。私たちの開始時刻まであと五分。全校生徒含めてのオリエンテーションなわけだからなかなか人数が多くて、私たちは班ごとに開始時間とルートが違っている。ゴールは同じところだけど、スタート地点からゴールまでの道のりがAとBとCに分かれてるのだ。私たちはC。
「はい、じゃあ準備出来てるね。 五分後にスタートだから」
「っしゃー!一位狙うぞウラー!」
「うるっさいよ樹耳元で叫ぶな」
ちらりと覗いてみれば、教師陣はとっくに持ち場に向かっているみたいだ。ゴールとスタート地点はそこまで距離が離れていないため、多分あの人はゴールに向かってから私たちの下り道を逆に上がっていくんだろうな。
そして時刻は私たちの出発開始の時刻となり、三人に合図をする。
「はーい、しゅっぱーつ」
「おー!」
小学生精神丸出しの樹が拳を突きだして、私の横を通り過ぎて先導を切る。班員だからって先導を取るなんてルールはないよ。やったね私が楽になれる。
すぐさま隣に千佳が並んできて、楽しみだねーと他愛のない会話を交わす。確かに、楽しみではある。
***
「……問い1から問い6の極限値を求めなさい」
あぁ、これは典型的な中間問題だ。
これなら私が出る幕もないだろう、と紙を班員に渡す。
「えっ姉御やってくれねぇの」
「極限値くらい計算しなくても出てくるでしょ」
「えっと……」
和樹くんが式を睨み、必死に記憶を手繰り寄せる。
「確か分数の場合だと分母が∞になるから0で、分子が∞になれば∞だったな」
「そうそう。 答えは∞か0かの二通りしかないから」
「じゃあ簡単だな」
高1の数学教師に和樹くんが六つの答えを出すと、先生はにっこり笑って私たちのスタンプカードにスタンプを押してくれた。これはもうオリエンテーションっていうかスタンプラリーじゃ。
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ayakaさん» Rの要素ございました? (2020年6月25日 14時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
ayaka - [R]つけてください (2020年6月24日 20時) (レス) id: 6bf9ec98ce (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ゆうきさん» あぁああうれしいです!全力できゅんっと来るような描写をさせていただきます…無駄に多く長い小説をすべて読んでいただき感激のあまり…いや本当に感激です!(語彙力が足りない)ありがとうございます、頑張らせていただきます!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - いか糖さん» 本当に長くなりそうなので飽きないって言ってくださってうれしいです……!ワンパターン・テンプレばかりの小説だというのにそんなことを言って下さるなんて…!頑張ります!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - コメント失礼します!先生かっこよすぎませんか!?一話から続けて読んでいますが、先生の一つ一つの動作にキュンキュンさせられてます!こんな先生本当にいたらいいのにな…更新がんばってください!楽しみにしています! (2017年6月11日 15時) (レス) id: 6c9139a3b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2014年11月14日 20時