【2】サド教師とツンデレ生徒【名前変換オリジナル】

第五十二話 ページ3

「急に決まったことだったから……どうにもできなくて」

苦笑する会長。
それを見て、私は深いため息をついた。

「生徒会が忙しいのは理解できますが……流石に今回のことは些か会長らしくないと思われます」
「……申し訳ない、こっちもバタバタしてて……本当はゆっくり決める時間があったんだが、俺らが資料失くしちゃったから……」
「其方の対応に追われてた、と？」

会長は何も答えないまま苦笑を浮かべつづける。
無言は肯定の意味だろう。
私は副会長、会計、書記、庶務らの視線を全身に浴びながらもう一度小さな溜息をついた。

「これで何事もなければいいんですけど……クレーム来た時の対処とかってありますか？」
「ひたすら謝るつもり。 それくらい真摯じゃなければ満足してもらえないだろうし」
「……そうですか」

そう冷静に言う会長に私は何度目か分からないため息を漏らす。
そう、会長が決めてしまっているのなら私からは何も強いことは言えなくなってしまう。
それは会長自身の決断だし、それを曲げられるほど私は為っちゃいない。

それなら、と呟きながら私は会長から一歩、後ずさりして遠ざかる。
そして小さく頭を下げて、そのまま踵を返した。

「あ、邦月さん」
「……はい？」

ドアに手をかける前に、高い声で名前を呼ばれた。
この声は確か、副会長だっただろうから。
振り返りざま彼女のほうを見やれば、強い眼差しで射抜かれた。

「……何でもないわ」
「……そうですか、では失礼します。 お疲れ様です」

後ろ手で扉を閉める。
そして、もう何度目か数えるのも億劫な回数の溜息をついた。

「あー……副会長に敵視されたな、あれは……」

副会長が会長に惚れているという話は有名だ。
確かにさっきのは明らかに私自身が会長にクレームをつけているようなものだったし、敵視されるのも仕方ないかもしれない。
……面倒くさいな、と包み隠さず思った。

憂鬱な思いを抱えたまま廊下を歩く。
今の私はどんな仏頂面を抱えているのだろうか。
わざわざ表情筋を動かす気力もわかないや。

何だか不穏だな、と思いつつ私は昇降口に向かった。
今日は早く帰って胡桃に癒されよう。
いろいろありすぎて疲れちゃった。

「……結局鬼に捕まっちゃっただなんて言ったら、暁怒るんだろうなぁ……」

また一つ憂鬱なことが増えて、私は目を細めながら上履きをはき替えた。
そのまま鞄を抱え、私は学校を背にする。
今日は特別、疲れた一日だったなぁ。

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