第六十五話 ページ16
静かすぎる廊下を駆け抜ける。
こんな静かな廊下を見るのは今月に入って何度目だろう。
最近、授業をサボってる回数が増えてきたのは、自分でも自覚してる。
そろそろ委員長として、気を引き締めなければならない。
でも、これだけはやり遂げなければ気が済まなかった。
私の足は迷いなく真っ直ぐ生徒指導室へ向かっている。
いつの間にかあの教室を我が物にした教師は、絶対にあの根城にいるはずだ。
そう思い、階段を駆け下りる。
そして、たどり着いたその先――……ノックもおろそかに、私は勢いに任せて扉を開けた。
「――……あ」
誰もいない教室に、私は力が抜けて膝から崩れ落ちる。
こんなに全力疾走したのは久しぶりで、荒い息をどうにか整えようと肩を上下させながら呼吸をつづける。
(そっか……授業中、かな……)
そのままずるずると壁にもたれかかる。
酸素不足で少しだけ涙目になった目元を擦りながら、私は天井を見つめる。
誰もいないのに、明かりだけは点いてる教室。
不用心に、鍵もかかっていない。
誰の許可を得たのだろうか、いつの間にか私物化されたこの教室には、先生の私物が置かれている。
そして、……嗚呼、この教室に溢れかえる、先生の匂い――。
気持ちを落ち着ければどんどんいろんな詳細に気付き、私は思わず自分を変態みたいだと罵倒して笑う。
時計の音が遠くに聞こえて、クーラーの音が心地よい。
いつまでもこの空間にいたくて、目を瞑って先ほど千佳にいわれたことを反復してみた。
「……いつか、限界が……くる」
そうか。
私は独りよがりだ。
何でもかんでも一人で背負い込む悪い癖はいつまでも直らなくて、それだから「しっかり者」って勘違いされていじけてしまう。
ただ周りに尊敬されてる私って、自分に酔って、癖を直さなくていいんだって甘えて、それで崩れ落ちたその先には何がある?
きっと、責任転嫁をして泣く、それだけだろう。
そしてまた、同じことを繰り返していくんだ。
呆然と照明を見つめる。
目を細めれば細めるほどそれはどんどんぼやけていく。
あぁ、このまま眠りにつけたら最高だ、と私は体育座りをした。
背中を壁に預けて、丸くなる。
何だか、最近はどこか、調子が狂う。
どこか、すごく、とても……苦しい。
ふと、弾けたように壁の時計を見る。
いつの間にか、三限目は終わっていた。今は四限目への移動時間だ。
「……行かなきゃ」
ふらりと立ち上がり、私はドアノブを握る……前に、それは開いて、しまった。
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ayakaさん» Rの要素ございました? (2020年6月25日 14時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
ayaka - [R]つけてください (2020年6月24日 20時) (レス) id: 6bf9ec98ce (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ゆうきさん» あぁああうれしいです!全力できゅんっと来るような描写をさせていただきます…無駄に多く長い小説をすべて読んでいただき感激のあまり…いや本当に感激です!(語彙力が足りない)ありがとうございます、頑張らせていただきます!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - いか糖さん» 本当に長くなりそうなので飽きないって言ってくださってうれしいです……!ワンパターン・テンプレばかりの小説だというのにそんなことを言って下さるなんて…!頑張ります!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - コメント失礼します!先生かっこよすぎませんか!?一話から続けて読んでいますが、先生の一つ一つの動作にキュンキュンさせられてます!こんな先生本当にいたらいいのにな…更新がんばってください!楽しみにしています! (2017年6月11日 15時) (レス) id: 6c9139a3b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2014年11月14日 20時