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第六十二話 ページ13

慌ててクラスに戻れば、ちょうど出てきた教師とすれ違う。
目を見開いた先生に、私は彼の口が開く前に謝罪を口にする。

「……すみません、えっと、道すがら生徒会から仕事を……」
「おぉ、そうか。 邦月は委員長だもんな。 分かった、欠席は消しとく」

それだけ言って、先生は私が来た方向とは逆の方向に向かい、やがて廊下の向こうへと消えてしまった。
それを見届けた私は、肩を落とし溜息をついた。

(……さっきのはいったい何なんだろう)

怒った笹塚先生の顔が頭から離れず、思考を苛む。
まるで悪いことをして先生を裏切ったかのような罪悪感がふつふつと湧いてくる。
どうして怒っていたんだろう?
どうしてあんな冷たい瞳をしていたんだろう?
答えが出そうにない問いだけが頭の中をぐるぐると回っていた。

暫くそこに立っていた私は、しょうがないと溜息をついた。
そして両手で思い切り自らの頬を強くたたく。
乾いた音が廊下に響き渡り、ヒリヒリと焼けるような痛みが頬全体に広がる。
だけど今はその痛みだけが頼りだった。

「……っよし!」

委員長たるもの、クラスメイト達に弱いところを見せてはならない。
それは私自身のプライドのようなもので、自分の弱みだけは絶対に見せたくなかった。
ようやく顔に笑みを取り戻した私は、扉を開いて教室の中に入る。

「おっ、姉御どこ行ってたの?」
「奏音、心配したんだよー!」
「サボってたんー?」

クラスメイトが口々に挨拶をくれる。
「ちょっと仕事があって」と曖昧に言えば、みんなは相槌を打ってからまた友人らと雑談を始めた。

そんな調子で自分の席に着き、腰かける。
ふー、と長いため息をついて次の授業の準備を始める。
いまだにあの顔が頭が離れなくて憂鬱だけど、おくびにも出さない。
固く閉ざされた唇には、いまだにしっかりと笑みが浮かんでいた。

「奏音」
「ん?」

再び呼ばれて顔を挙げると、そこには千佳がいた。
だけど、何か様子がおかしい。
いつものふわふわとした呑気そうな笑みを浮かべた千佳じゃない。
口は真一文字に結ばれ、何を考えているか分からない瞳でじっとこちらを見ている。
先ほどの笹塚先生の表情を思いだしてしまい、今日は厄日だ、と静かに心の中で思っておいた。

「……どうしたの、千佳?」

いつも明るい千佳がこんな表情をするということは何かあったんだろう、と思った。
だけど開いた千佳の口から出る言葉は、完全に予想外だった。

「それはこっちの台詞だよ」

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設定タグ:ツンデレ , ドS , オリジナル   
作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ayakaさん» Rの要素ございました? (2020年6月25日 14時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
ayaka - [R]つけてください (2020年6月24日 20時) (レス) id: 6bf9ec98ce (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ゆうきさん» あぁああうれしいです!全力できゅんっと来るような描写をさせていただきます…無駄に多く長い小説をすべて読んでいただき感激のあまり…いや本当に感激です!(語彙力が足りない)ありがとうございます、頑張らせていただきます!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - いか糖さん» 本当に長くなりそうなので飽きないって言ってくださってうれしいです……!ワンパターン・テンプレばかりの小説だというのにそんなことを言って下さるなんて…!頑張ります!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - コメント失礼します!先生かっこよすぎませんか!?一話から続けて読んでいますが、先生の一つ一つの動作にキュンキュンさせられてます!こんな先生本当にいたらいいのにな…更新がんばってください!楽しみにしています! (2017年6月11日 15時) (レス) id: 6c9139a3b2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:   
作成日時:2014年11月14日 20時

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