第六十話 ページ11
そんな事を言われてしまえば、タメになる以外に選択肢がなくなってしまうじゃないか。
私は戸惑いがちに、俯いてしまう。
そしてそのまま会長を見上げながらおどおど、と口を開く。
「じ……じゃあ、タメ……で」
「……ん、……うん、それが嬉しいな」
少しだけ驚いたような顔をした会長は、すぐにふわりといつもの笑みを浮かべた。
私はとにかく照れ隠しに、慌てて顔を背け資料へと向き直る。
後ろからくすくすと私を笑うような声がしたが無視だ、無視。
そしてそのまま、沈黙が流れた。
資料室の中には私たちが紙をぱらぱらと捲る音だけ響く。
集中すると無口になってしまうのは当然なことで、私はただ集中して目の前の資料に目を走らせる。
どれも遠足とは関係のない資料で、私の隣にはすでに用済みの資料が山になっていた。
***
「……っはー……」
誰からともなく溜息を吐きだす。
もうどれくらい資料室の中に閉じこもっているのだろうか。
完全サボり同然になっている。授業は大丈夫だろうか。
まぁ、あの教師の授業は進むのがかなり遅いし、追いつくのも容易いだろう。
ただ授業態度的な感じのイメージはダウンだけど。
「見つからないね……」
「誤って処分されてたり、とか……?」
「それはない。 先代会長はそんなヘマをするような男じゃない」
きっぱりと言い切った会長に、私は相槌を打つ。
だが見つからないものは見つからない。
もしかしてどこかで見逃しているのかもしれないとすら思ってしまった。
こんなに探しても見つからないのというのだから、諦めそうにもなるというものだ。
もう一度息をついて、私は次の資料に取り掛かった。
そして、声をあげる。
「見つけた!」
あまりの嬉しさに思わず声が張りあがるが、それは私だけではなくて。
「え!」
普段は落ち着いた物腰の会長までが、まるで宝くじでも当たったかのようなハイテンションだ。
資料には大きく、2013年度遠足企画書と書かれてあった。
メモには概要と書かれていたから、おそらくこの資料で正解だろう。
「おぉ、見つけた!やったぁ!」
まるで子供のようにはしゃぐ会長にびっくりする。
こんな性格だったのか会長。ギャップ萌えしそうだ。
「ありがとう、邦月さん!助かった!」
「い、いえ、どういたしまして」
思い切り感謝をされてどうすればいいのかよくわからない。
そのまま会長は勢いよく資料室を飛び出した。
結構急ぎの資料だったのだろう。……見つかってよかったな。
328人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ayakaさん» Rの要素ございました? (2020年6月25日 14時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
ayaka - [R]つけてください (2020年6月24日 20時) (レス) id: 6bf9ec98ce (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ゆうきさん» あぁああうれしいです!全力できゅんっと来るような描写をさせていただきます…無駄に多く長い小説をすべて読んでいただき感激のあまり…いや本当に感激です!(語彙力が足りない)ありがとうございます、頑張らせていただきます!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - いか糖さん» 本当に長くなりそうなので飽きないって言ってくださってうれしいです……!ワンパターン・テンプレばかりの小説だというのにそんなことを言って下さるなんて…!頑張ります!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - コメント失礼します!先生かっこよすぎませんか!?一話から続けて読んでいますが、先生の一つ一つの動作にキュンキュンさせられてます!こんな先生本当にいたらいいのにな…更新がんばってください!楽しみにしています! (2017年6月11日 15時) (レス) id: 6c9139a3b2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2014年11月14日 20時