00話 ページ49
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「A!待ってくれ!俺を置いて学校に行かないでくれ!」
「遅刻するから無理。」
家の玄関の扉に手を掛け、Aはめんどくさそうに炭治郎に振り返る。
言ったこととは正反対に、早くしてよと言いたげな視線を炭治郎に向けながら。
「準備できたぞ!さあ行こう!」
「さりげなく手繋がないで貰えます?」
炭治郎はAの手を取ると勢いよく玄関の扉を開き、いってきまーす!と声を上げる。
Aも炭治郎に腕を引かれ呆れた顔をしながらもいってきます、と言って家を出る。
Aは隣を歩く双子の弟にちらりと視線をやる。
するとばちりと目が合った。どうやら炭治郎はAのことをガン見していたらしい。
呆れ返ったような視線を零しながらも、Aは炭治郎に繋がれた手を振りほどくことはなかった。
理由は単純。高校生になってまで、と思われるかもしれないけれど。
シスコンなところも引っ括めて、なんやかんやで炭治郎のことが大好きだから。
「手を繋ぎながら登校する相手が彼氏ではなく弟だとは…」
「俺は嬉しいぞ!」
「はいはい。」
はぁ、と溜め息をひとつ零す。
それでも、唯一無二のたった二人だけの双子。
一等大事で大好きな人。
「あ、A!炭治郎!」
すると後ろからパタパタと走って来る音がした。
くるりと振り返ると無一郎と有一郎の姿が。
「おはよう無一郎君、有一郎君。」
「二人ともおはよう!」
有一郎はAのことをじぃっと見つめていた。いつもよりほんの少しだけ柔らかい視線で。
「…無一郎のこと、お前になら託せる。」
そしてぼそりと、Aに耳打ちした。
Aは一瞬ぽかんとしていたがすぐに笑顔になってありがとう、と呟いた。
無一郎はAと兄さんだけ狡い、とAの空いている手をぎゅっと握った。
なんでもないよ、と微笑むと無一郎は不貞腐れたように頬を膨らませる。
「みんな、早く学校に行こう!
それと俺がAのことを席までちゃんと送るからな!」
「他クラス入るの校則違反だから。」
「え、僕も行く。」
「話聞いてた?」
「無一郎は行かせない。」
「うんそうしてくれると私がすごく助かる。」
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何気ない、堪らなく愛おしいこの日常が。
これから先もずっと、続きますように。
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とく(プロフ) - すごくいいお話でした…。涙が出るほど(笑) (7月19日 12時) (レス) id: 72e740ca3a (このIDを非表示/違反報告)
えむえいか - 貴方様は、神ですか? (2022年5月20日 16時) (レス) @page5 id: 6c61bb4c69 (このIDを非表示/違反報告)
孤 - 神作……… (2022年5月9日 15時) (レス) @page44 id: af8576bbe7 (このIDを非表示/違反報告)
ふぐひらめ - たまに………たまに原作を思い出すような描写があって……目から汗が……… (2021年12月5日 7時) (レス) @page50 id: f76242864c (このIDを非表示/違反報告)
夏鈴 - 炭治郎のシスコン具合がめっちゃ良かったです‼︎無一郎と有一郎がでて来るとか最高すぎます‼︎とっても良い作品ありがとうございますー! (2021年11月21日 22時) (レス) @page50 id: 378955c846 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白霞 | 作成日時:2020年6月13日 19時