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二十五 還る場所 ページ25

そよそよと風に吹かれ、私は時計塔の上で足を投げ出した。

桜の雨は妖魔界に降り注いでいる。

手元の写真を何度も見ては胸に抱く。

私はここに居る。

帰るべき場所はすぐそこに。

約束は今も胸に。


「A」


優しい声は私を温める。


「……また見ているのか」


呆れながらもその金色の瞳は私を受け入れた。


「オロチさん」


オロチさんは私の隣に腰をおろすと写真を取り上げた。


「……情けない顔だ」


写真の中の自分を見てオロチさんはため息をついた。


「私はいいと思う……」


私はオロチさんの肩にぴたりと寄り添い、写真を覗き込んだ。


「帰る場所はいつもここがいい。好きな場所……。温かくて寂しいのなんて忘れちゃう」


オロチさんは私の手を絡め取ると頬を私の髪に擦り寄った。


「私も同じだ。これ以上に温かい場所はないだろう……」


ここは帰る場所。

温かい場所。

決して還ることなんて考えやしない。

寂しさを埋めるのは今の温もり。

これ以上にないものと仮定し、それを事実と結びつけた。

もし願う世界があるのなら、そんなことは野暮だと言うだろう。

だけど生きている限り耐えられないことがあると知ってはこの先、待ち受ける運命に否定なんてできない。

まだ怖いから、寂しいから、私は今ある温もりにすがる。

ここは私が今帰る場所。


「ずーっと、続けばいいのにね」



*fin*

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剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!!完結編を投稿したので、よろしくお願いします!! (2019年10月20日 11時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
yuki - 番外編もすごく素敵でした!!続編楽しみにしてます。頑張ってください! (2019年10月14日 23時) (レス) id: f5a4951e98 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - れるれる(現.本垢)さん» 初めまして!!そう言っていただけてとても嬉しいです!!新作も今書いているので、次回作も読んでくださると嬉しいです!! (2019年9月25日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
れるれる(現.本垢)(プロフ) - 初めまして。この作品、すごく好きです。妖ウォを卒業しても剣城さんの作品だけはずっと見てるんです(笑)これからも更新頑張って下さい。 (2019年9月24日 21時) (レス) id: bb493c8f2f (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - なつさん» 期間が空いてしまったので勘違いさせてしまいました……!!ゆっくりでも完結までは投稿するので安心してください!! (2019年9月24日 18時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年9月23日 0時

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