十六 繋ぎ止めたくて ページ16
「オロチさん……」
耳元で息混じりに呟くとオロチさんは肩をびくつかせた。
「オロチさん、す、好き……大好き、なんだけど……。その、今夜は……えっと……」
いざとなると恥ずかしくなってしまうセリフを必死に言おうとしていると、オロチさんは突然私の両腕を掴んでぐっと前に押した。
押し倒されるとオロチさんは私の首元に噛み付いた。
「──……すまない。私は取り返しのつかないことをしてしまった」
オロチさんは何度も謝りながら私の首元に噛み付いた。
顔をあげたオロチさんの顔は真っ赤で、凄く悲しい顔をしていた。
「ま、待って……取り返しのつかないことってどいうこと……?」
オロチさんは自身の懐から何かを取り出し、私の手に押し付けた。
「……瓶?」
それは小さな瓶だった。
その瓶にはとても見覚えがある。
私が老いらんさんに貰ったものと同じものだった。
中身は入っていない。
「……それは以前Aが飲まされたものと同じものだ。桜と信を産んでから2人きりになる時間がなく、私はAに充分に触れる時間がないことに不満を持っていた。Aは平気そうにしていたから押さえてはいたが、最近歯止めが効かなくなってしまった……。もしかすると気持ちが薄れたのではないかと不安になって今日2人でいれることをいいことに私は……こんな卑怯なことをしてAを繋ぎ留めようと──……」
「オロチさん……。私だってオロチさんを繋ぎ留めたくて同じことした……」
私は手を引っこ抜いて懐に手を突っ込んだ。
同じく空になった瓶を押し付けるとオロチさんはその瓶と私の顔を交互に見た。
「男の人はこっちから繋ぎ留めないと何処か別の所へ行ってしまうと聞いて……。オロチさんは大丈夫だと思ってたけど、少しだけ不安になっちゃって……。それとオロチさんはいつも私のことを考えてくれているから、その。満足していないかなと思って……だから私、今日はオロチさんが満足できるように頑張ろうかと……覚悟してた……」
オロチさんは私の髪のリボンを引き解くと、唇に指を這わせた。
「……分かっていても何度でも言葉が欲しい。行動で示して欲しくなる。──私はA以外の女など興味ない。私が愛せるのはAだけだ。Aの全てが欲しい。──……愛している」
「私もオロチさんのこと愛してる……。少しくらい痛くても……オロチさんが満足して私のこと愛してくれるなら、嬉しい。だから、今夜はオロチさんの好きにして……?」
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剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!!完結編を投稿したので、よろしくお願いします!! (2019年10月20日 11時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
yuki - 番外編もすごく素敵でした!!続編楽しみにしてます。頑張ってください! (2019年10月14日 23時) (レス) id: f5a4951e98 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - れるれる(現.本垢)さん» 初めまして!!そう言っていただけてとても嬉しいです!!新作も今書いているので、次回作も読んでくださると嬉しいです!! (2019年9月25日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
れるれる(現.本垢)(プロフ) - 初めまして。この作品、すごく好きです。妖ウォを卒業しても剣城さんの作品だけはずっと見てるんです(笑)これからも更新頑張って下さい。 (2019年9月24日 21時) (レス) id: bb493c8f2f (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - なつさん» 期間が空いてしまったので勘違いさせてしまいました……!!ゆっくりでも完結までは投稿するので安心してください!! (2019年9月24日 18時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年9月23日 0時