十五 仕込み ページ15
「……うん。きっと、大丈夫だよね」
妖怪エレベーターに乗り込み、完全密室になったことをいいことに私はオロチさんの腕をぎゅっと抱きしめた。
何度も何度も心の中で好きと呟いては更にその感情が強くなっていく。
家に着いてオロチさんは疲れてしまったのか、壁にもたれ目を閉じてしまった。
今日のオロチさんは妙に落ち着いている。
「……オロチさん、お茶飲むけどいる?」
「……ああ」
私はそそくさと台所へ入り、お茶の準備をした。
湯呑を2つと急須を準備をして、一度オロチさんの様子を確認した。
オロチさんに背を向けるように立って、懐から瓶を取り出した。
まだ夕方だけど、もう外にいく用事はないので少し早くてもいいだろう。
音をたてないように湯呑に半分ずつ入れてお茶を注いだ。
「A。えんらえんらが来ている」
「ぇ、分かった……」
私はお盆に湯呑をのせ、台所を出た。
台所前に居たオロチさんにそれを渡して
玄関を開けるとえんらえんらさんが居た。
「今大丈夫だったかしら〜」
「だっ、大丈夫……」
何の用か尋ねるとえんらえんらさんは私とオロチさんが心配だと言った。
「ね、老いらんから"あれ"もらったんでしょ〜?時間差があるからもう今から仕込んでいいんじゃないかしら〜」
「あ、その……つい今お茶に入れていて……」
するとえんらえんらさんはにんまりと笑った。
「──そう。上手く行くといいわね。それと老いらんから伝言で、"あれ"は1瓶まるごと1人で飲むことはしないようにねって。体に害はないけど、半分でも結構効き目が強いみたいだから……」
「半分にわけて入れたので……」
えんらえんらさんは応援していると行って去ってしまった。
私は扉を閉めて鍵をかけてオロチさんの隣に座った。
まだオロチさんは湯呑に手をつけていないようだ。
「……そっちに何かあるの」
オロチさんは不自然に顔を背けていた。
「あ……、ああ。いや、なんでもない」
ぎこちない手つきで湯呑を掴むとぐいっと飲み干した。
「……飲まないのか」
「ぇっ……うん、飲む……けど」
私はオロチさんの視線が気になりつつも、湯呑に口をつけた。
1時間程すると体がぽかぽかと温かくなっていた。
だけど思ったよりよく効いているのか、とても苦しい。
オロチさんも同じようで、それを悟られないように静かに震えた呼吸を繰り返していた。
帯を外し、胸元を少しだけ開ける。
顔を伏せているオロチさんに近寄って顔を覗き込んだ。
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剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!!完結編を投稿したので、よろしくお願いします!! (2019年10月20日 11時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
yuki - 番外編もすごく素敵でした!!続編楽しみにしてます。頑張ってください! (2019年10月14日 23時) (レス) id: f5a4951e98 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - れるれる(現.本垢)さん» 初めまして!!そう言っていただけてとても嬉しいです!!新作も今書いているので、次回作も読んでくださると嬉しいです!! (2019年9月25日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
れるれる(現.本垢)(プロフ) - 初めまして。この作品、すごく好きです。妖ウォを卒業しても剣城さんの作品だけはずっと見てるんです(笑)これからも更新頑張って下さい。 (2019年9月24日 21時) (レス) id: bb493c8f2f (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - なつさん» 期間が空いてしまったので勘違いさせてしまいました……!!ゆっくりでも完結までは投稿するので安心してください!! (2019年9月24日 18時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年9月23日 0時