さくらの営み 5【オロチ】 (ページ45)

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二百四十五武家屋敷ページ45

ちらほらと妖怪が出歩く中、私はその中に紛れていく。

しばらく歩いていると土蜘蛛さんの屋敷が見えてきた。

見た目は武家屋敷そのものであったが、妖魔界独特の配色がされている。

門から覗き込んでも誰も居る様な気はしない。

こういう場合どうやって呼び出すのがいいのだろうか。

大声で呼んで誰か来るだろうか。

門の前でうろうろしていると背後から肩を叩かれた。

思わず全速力で逃げ出す。

「待たぬか」

聞き覚えのある声に足を止め振り向くとそこには土蜘蛛さんがいた。

「……オロチは付き添って居ないのだな」

「ぇ、オロチさんここにいるのでは……」

土蜘蛛さんは立ち話もなんだからと、私を中に入れてくれた。

あとをついていくと客間に案内された。

「腰をかけて待っているといい」

土蜘蛛さんはそう言ってどこかへ言ってしまった。

私は挙動不審に辺りを見回しながら座布団の上で正座をした。

辺りをきょろきょろとしながら手持ち無沙汰に座布団の端っこを掴んだり、目の前のテーブルの上を撫でたりした。

「待たせたな」

少しして土蜘蛛さんは小さなお盆にお茶2つにお茶請けをのせやってきた。

テーブルをはさみ私の前に座るとお茶とお茶請けを私の手元に差し出した。

「あ、ありがとうございます……」

会釈してとりあえずお茶に手を伸ばした。

「オロチに用があると見受けたが今日はこの屋敷には誰もおらぬ。誰もくる用もない」

「でも……エンマ大王さまがオロチさんは土蜘蛛さんのところにいくと伺ったのでこうして来たのですが」

土蜘蛛さんは首を捻っていつも一緒に居る私の方が知っているのではと言った。

私は静に首を横に振る。

「喧嘩……という訳ではないとは思いますが、ちょっとした行き違いといいますか。私がオロチさんの機嫌を損ねる様なことをしたと思うんです」

「その言い草だとはっきりと自覚しているのではないのだな。とはいえオロチは機嫌を悪くして大切にしている者から離れるなんてことはするまい。一体何があったのだ」

まさかキスしましたなんて言えるはずがなく私は黙り込んだ。

「……2人のことなら2人が解決するべきだ。オロチが行きそうなところを探して行くといい。夜になっても屋敷に戻らなければ明日またここへ来るが良い。その時は吾輩も手助けをしよう」