さくらの営み 5【オロチ】 (ページ31)

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二百三十一裏切られた気持ちページ31

「姫さまは最初から自分が消えてしまうことを知っていた……っっそれなのに俺と無理な約束を……」

黒雨の皮膚が黒く変わっていく。

「桜神が消えただって……？」

「桜が長いこと咲かないのはそういうことだったの……？」

観衆は桜神が消えていた事実にざわつきをみせた。

皆、桜神が消えたことを知らなかったようだった。

「だっ、だけど力を受け継ぐ者がいるはずだよ……」

「だったら桜は咲くはずだろ⁉それに黒魔も存在しないはずだ……‼」

エンマ大王さまが静かにするよう叫んだが余計に荒れるばかりだった。

「駄目……っっ」

黒雨の皮膚が剥がれかけたところも再び黒色が侵食していく。

ざぁざぁと突然降り出した雨は影を作った。

その中でつんざくような悲鳴が聞こえた。

観衆の中に赤い目がギラリと光る。

「貴様なんぞ裁きを受ける資格もない」

それは黒狼だった。

「な、仲間を呼んだのか⁉」

「あんな者仲間などではない‼」

黒狼は近くにいた妖怪に噛み付いた。

その妖怪はあっという間に黒く濁り黒魔へと変貌した。

そしてその妖怪も他の妖怪に噛みつき、負の連鎖が始まる。

なんとかしないといけない。

力を使おうとしたが、手錠は力を封じるものなのか全く力が入らない。

「A……」

高台のすぐ下にいたオロチさんが飛び乗ってきて手錠を外した。

「ありがとうございます……」

オロチさんは迷うことなく黒雨の手錠も外した。

それを見ていた一部の妖怪たちが抗議しだした。

何故自分たちより罪人を助けるのか。

これは裏切りだ。

浴びせる言葉はずっとずっと簡単に口から出るものだ。

「……うるさい‼裏切られた気持ちなんておまえらなんかに分かるもんか‼分からないくせして軽々しく口にするな……っっ‼」

私は自分で頭が痛くなる程に叫んだ。

「ずっと信じていた誰かに理由なく裏切られて今日までずっと抱えてきた苦しみを知らないくせに……‼真似事で軽々しくするな……っっ‼」