二百十五 親子 ページ15
一方的な力だけでは戻れないこともある。
絶対的でない力だと知った私は更に悩む。
屋敷に着いて部屋に男の子を連れ、泣き止むまでずっと抱きしめていた。
「……本当に許さなくていいのか?先生もパパもママも許してあげてって何回も言うんだ。でも許したくないし、今まで通りにできる自信もない。ずっと悩んで迷ってたらいつの間にか本当に迷っちゃった」
「……そっか。でもあなたが許せないんだったら許さなくていいんだよ」
男の子は安心したような顔をして笑った。
私はもう一度、桜の力を男の子にかける。
まだ肌に残っていた黒色は綺麗に消えていった。
「うん、もう大丈夫そうだね。家まで送って行くから一緒に行こう」
男の子は頷き、私の膝から降りると部屋の扉を開けた。
「うわあ‼」
「失礼な奴だな」
扉から入ってきたのはオロチさんだった。
「A、もうすぐ日が暮れる。その前に人間界に連れていくぞ」
「ちょうど今行こうとしていたところです」
男の子はどうやらオロチさんが怖いらしく、私の後ろに回り込み羽織の中に頭を隠してしまった。
「……オロチさん目つき悪いんですよ」
「産まれ付きのものはどうしようもないだろう」
オロチさんは機嫌悪そうに腕を組んだ。
男の子は羽織の中からちらちらと私とオロチさんの顔を覗き込んでいる。
「怖くないよ。ほら」
私はオロチさんの腕組みを無理矢理外し手を繋いでみせた。
「怖いのは見た目だけ。ね、ちゃんと見て」
「べ、別に怖くねぇし‼」
男の子は強がりをみせて羽織から出てきた。
「帰ろうか」
男の子は私の指先をぎゅっと握った。
それを見てオロチさんは更に機嫌悪そうにしながら男の子の開いた手を握った。
「いってー‼」
どうやら男の子が怖がったことが気に食わなかったようだ。
大人げないと思いつつ部屋を出るとえんらえんらさんと出くわした。
「あら〜?親子でどこに行くのかしら〜」
「親子ではありません。あの、えんらえんらさん。置いていってしまってすみませんでした」
「いいのよ〜。それよりも……」
えんらえんらさんは帰りは少し遅めに、と不可解なことを言って去っていった。
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剣城京菜(プロフ) - aruya100さん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年2月8日 9時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
aruya100(プロフ) - いつも見させていただいてます。更新頑張ってください!期待してます! (2019年2月4日 23時) (レス) id: b60ccdc28b (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年1月30日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
yuki - 作品楽しませていただいてます。続き頑張って下さい! (2019年1月30日 8時) (レス) id: 01053ecf80 (このIDを非表示/違反報告)
紅桜(プロフ) - 剣城京菜さん» 頑張ります...! (2019年1月23日 19時) (レス) id: 84fb339dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年1月21日 21時