『Tresor 』～Cinderella★Dream～ (ページ6)

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★ ページ6

『私は西岡Aよ。よろしくね？』

警戒心が薄れたからか、さっきよりも柔らかく嫌味のない笑顔で答えてくれた。

入社式が終了後、説明も研修もなく即それぞれの戦場にぶち込まれた俺ら新入社員。

俺らのてっぺんに立つ絶対君主は本当に『使えないモノはいらない主義』という事を、入社式から僅か1時間で身を持って教えられた。

新部門の立ち上げだから上司という上司もいなければ、デスクにPCしか置かれてない空間で、何をどうしたらいいのか皆目、見当もつかない。

ただ潤に【好きにやっていいってよ】ってだけ言われた。

つまりゼロからテメェで作って俺を納得させなきゃいらねぇと社長様からのメッセージだろう。

『ニノ～？どするん？』

こんな時でも変わらない緩い口調はイラつかされるどころか、なぜか心がふんわりとするから不思議だ。

『好きにしていいって。』

『ふぅ～ん。俺はニノと一緒ならなんでもいいよ？』

クルクルと椅子を回転させて他人事。

『んじゃ絵を描いてよ。』

『何の？』

『とりあえずとびっきりイケメンを4、5人。』

『ニノのお願いなら俺、頑張っちゃうよ。』

『頑張れ、頑張れ。今日はタダ酒だ。』

『あ！そうだったね！んじゃいっちょ頑張っちゃお。』

今日は無礼講の新入社員歓迎会があるらしく、それを思い出してルンルンで自前のペンタブを取り出し、PCにセットしてる。

珍しく大野さんがやる気になってくれたんで、俺もPCをつけて作業を始めた。

・・・『ニノ～。呑み会行こう！』

どれくらいの時間が経ったのか…

俺の長所なのか短所なのかわからないけど、一度集中すると周りが見えなくなり、雑音すら聞こえなくなる。

『今、何時？』

『もう18時過ぎたよ。まぁ～たマイワードにぶっ飛んでたね？』

まぁくんの口調は呆れつつも、ニコニコの笑顔で俺のデスクに近寄りPCを覗き込んだ。

『見てわかんの？』

『………全然…全くわからないや。』

にぱっと笑って今度は大野さんのPCを覗く。

『さっすが大ちゃん！すげぇ上手。』

『まだまだだけどね。』

このおじさんも細かい事をやり始めたらとことん突き進んじゃうからな。

『そんな手の込んだのじゃなくて、とりあえずラフ画でいいんだけど？』

『ちゃんとした仕事ないからつまんないんだもん。』

『まぁ…確かに…。』

予算やコンセプト、ターゲット層…

何一つとして指示もされてない中、どこをゴールに想定したらいいのか…。