☆ ページ4
『わたし、大きくなったらシンデレラになりたいの。』
10が歳が離れたピュアな妹は、それを疑う事もせずに事あるごとに口にしていた。
それを真に受けて、いちいちバカにしたり貶したり無駄な事はしなかった。
だたシンデレラになりたいと口に出せるピュアさと素直さは羨ましいと思えたけど。
その事を口に出せるほどの素直さもピュアさもない年齢だし…
そもそも私にシンデレラなんて似合わない。
キャラじゃない。
シンデレラなんて綺麗なお姫様なんかじゃなく、意地悪な継母…
それかお姫様に嫉妬する魔女がお似合い。
「A？俺、帰るけど。」
そう声を掛けられて向けた視線の先にはすっかり帰る準備ができている二宮が立っていて。
ベッドから気怠い身体を起こすと、何も身に纏ってないから胸が晒される。
それを隠す事もなく…
「うん…気をつけてね？」
「あぁ…。」
帰り際、いつも二宮は何か言いたげに眉を下げ、寂しそうな顔をする。
それを見て見ぬふり…。
「そうだ。言い忘れてだけど…。」
「ん？」
「来週、妹がここに引っ越してくるのよ。」
「あぁ。歳の離れた妹ちゃんね？」
「そう。こっちの大学が受かって、過保護で心配性の親がしばらくは私と一緒に住まわせたいらしくて。」
私が東京に出て来た時には反対もされなかったけど、我が家のお姫様は天然で世間知らずだからか過保護だ。
世間知らずとは言っても、そうしたのはまぎれもなく親が過度に甘やかしたからなんだろうけど。
「そっか…わかった。」
そう返事を寄越した二宮はどこか諦めたようにため息を吐いた。
逢瀬は専らうちだったからこれからどうするのか…
この関係を続けるのか…
私が聞ける立場ではない。
「んじゃ、次からは俺んちな？」
まさかそんな答えが返ってくるとは思わずびっくりする。
「何よ？」
「いや…あんたの家って女人禁制じゃなかったっけ？」
「…お前は特別だからいいんだよ。」
力なく微笑む二宮に胸がキューッと締め付けられる。
「そのかわり…。」
「ん？」
「俺んちでいいけど…。」
「うん。」
「その日は泊まってけよ。それが条件。」
二宮の出した条件が意外すぎて言葉も出ない。
だって二宮はこういう夜を過ごしても、ただの一度も泊まっていった事はない。
そんな関係じゃないからか、余韻を楽しむ事もせず、今日みたいにそそくさと帰り仕度をするのに…。
不思議に思っても二宮の縋るような目に頷くしか出来なかった。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2020年2月8日 7時
