*NEAR

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結局全ての仕事が片付いたのは21時を少し過ぎたところだった。

気付いたらデスクに向かってる人も疎らになっていて遅くなっちゃったなあとため息がこぼれそうになる。
早く行かなきゃ。

A終わったよ、遅くなったけど今から向かうね!

すぐ行きます！とダッシュしてるうさぎのスタンプを一緒に送って上司に一言かけ、そそくさとエレベーターに乗り込んだ。


1Fに着くとぴったりのタイミングで電話が鳴った。
エレベーターから降りながらそのまま通話ボタンを押す。


「もしもし？」
「わし。」
「！てつやだ〜今終わったよ。すぐ行くからね。」


沈んでいた気分が跳ね上がるのと比例して声のトーンが上がったのが自分でもわかって、ちょっと恥ずかしい。

そのまま歩いて外に出ると後ろから飛びつかれる。


「っきゃ、！」


暴れる暇もなくすっぽりと腕に収まってしまい縮こまった。
だれ、怖い、てつや、と言葉に出来ないままでふわりと後ろから香る甘い匂いに違和感を感じた。
…嗅いだことある、においだ。


驚きすぎると声も出ないのかと一周回って冷静な事を考えてるとワンテンポ遅れて自分の小さな悲鳴が電話越しに聞こえる。

「…え？」

「だーれだ。」
耳元で聞こえた声は優しい優しいてつやの声だった。
肩口に鼻を寄せて擦り寄ってくる行動に笑みがこぼれた。


「てつや、なんで？」


驚きと嬉しさで涙声が混じると、それに気付いたのかぐいと手を引っ張られててつやの胸に顔を埋められた。
ぽんぽんとあやすような形で背中を叩かれながら紡がれた言葉にまたドキドキした。


「待てんから迎え来ちゃった」


驚いた？泣かんでよ〜…と情けない声を上げてるてつやを、ぎゅうと抱きしめる。
いきなりの行動に驚いたのか少しびっくりした表情でこちらを覗き込んでくるので見上げると、小さく何かを呟いておでこに唇が触れた。


「はよ帰ろ…」
「え、わっ…！」


手を掴まれ早歩きで車まで向かうと押し込まれた。
隣に乗り込んだてつやの耳は心なしか紅い様な気がした。


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可愛くて格好良くて、優しい彼氏。

きみと過ごせるなら、どんな日常も宝物に変わる。
細やかな、しあわせ。



＿＿＿ / end



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「ねえさっき何て言ったの？」
「なにがー。」
「でこちゅーする前」
「聞きたいんか？」
「うん」

タイミングよく赤信号で停車すると腕を引かれて囁かれた。

「可愛すぎるから"抱きたくなる"、って言ったんよ」


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