第103話 本当は怖くて寒い ページ10
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−懲罰房
革ベルトの手錠に繋がれ、ぐったりしている小笠原海の姿がある。身につけている青白いワイシャツは水をたっぷり吸っており、体温を奪っていった。
ぶるっと、身震いする小笠原海。
「(早く、ここから出ないと…)」
3m以上高い位置にある小さな天窓を見上げながら、革ベルトの手錠を外そうと力をこめる。その時、懲罰房の外から耳障りな靴の音が聞こえてきた。
靴音は小笠原海のいる部屋の前で止まると、ゆっくりと重厚な扉が開かれる。
眩しい光が隙間から漏れ、目を瞑る小笠原海。逆光に縁取られた人影の正体は、船津稜雅だった。
「随分と寒そうだね、海」
船津稜雅はそう言いながら、ぐったりしている小笠原海の元へ歩み寄った。
「Aもね、今の海と同じような顔をしてるよ。毎日凍えそうな顔で、今を頑張って生きてる」
言い終えると同時に、船津稜雅は小笠原海の前に立つ。
「海は本当にすごいよ。色んな人を魅了し、そしてその気にさせる。
…だけどね、自分の恐ろしさを知った方が良い」
船津稜雅は、小笠原海の手首にきつく縛られている革ベルトに触れると外し始めた。
「見せてあげるよ。今のAの姿」
かしゃん、と音を立ててぶら下がる革ベルト。重たい扉を抜けると、傍らには新しい燕尾服を持っている何人かの執事がいた。
*
午前の授業が終わり、私は午後の予習をしようと静かに席を立った。
「なあ。お前、最近俺んとこ来てくれへんのな…」
そう言いながら、寂しそうな声で私に声をかける吉野晃一。
「ご、ごめんなさい…。今は、ちょっと…」
これから図書館に寄って勉強しなくてはならない。なんせ、午後には小テストがある。
私は、「もう少し落ち着いたら行くよ」と声をかけて教室を出た。
*
図書館に着いた私は、適当な席に腰掛けて教科書やら参考書やらを開く。
ノートを開き、午後の小テストに備えて予習を始めた。
「出たよ、あいつ」
「図書館にまで来て、カンニングペーパー作りとか熱心だねえ」
うるさい嗤い声が聞こえる。私は聞こえないふりをした。
「(小笠原さんの復帰のためにも、成績を取り戻さなくちゃ…)」
カンニング疑惑を晴らすためにも、私はいつも以上に勉強に打ち込むしかなかった。
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桜月(プロフ) - うめこんぶさん» わわ!ご指摘ありがとうございます(;´Д`A 引き続き、良い小説が書けるよう頑張ります!よろしくお願いします!d( ̄  ̄) (2018年12月23日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
うめこんぶ(プロフ) - 更新ありがとうございます!126話と127話が抜けてると思いました。これからも楽しみにしています! (2018年12月23日 1時) (レス) id: 0ab6ffd78b (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ぱにぱにこちゃんさん» コメントありがとうございます・:*+.\(( °ω° ))/.:+ ゆるゆるっとですが、更新しますのでぜひ!よろしくお願いいたします♪ (2018年12月1日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
ぱにぱにこちゃん(プロフ) - 更新待ってますっ! (2018年6月17日 7時) (レス) id: e09c37547f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SORA | 作者ホームページ:https://twitter.com/SORA_39xx
作成日時:2018年5月29日 19時