第100話 徐々に奪われてく ページ7
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「あの、船津さん…。肩…離してください…」
おずおずと口を開く私。私の肩を抱き寄せていた船津さんは、そっと腕を離す。
「ごめんね。気を悪くした?」
そう言いながら、私の顔を覗き込んだ。
至近距離の顔。視線がぶつかる。
「…また、変な写真を撮られるので」
私はふいっと目を逸らし、船津さんの横を通り抜ける。その瞬間、ぐっと腕を掴まれた。
「ねえ、A」
船津さんに名前を呼ばれ、私は反射的に振り返った。
「海から、伝言がある。
しばらく、この学院を離れるらしい。もうAの面倒を見られない、と」
「えっ?」
反射的に声が出る私。
「数々の問題行動を見かねた執事委員会が、海を強制的に執事学校へ呼び戻した。
海がいつ戻ってくるのか…それは分からない」
小笠原さんが…戻って来ないかもしれない…?
ばくばくと心臓が鳴る。
目の前が、徐々に暗くなっていくのが分かった。私の未来を暗示しているからなのか、それとも船津さんが私の近くにいるからなのか。
「でも、Aなら大丈夫だよ。海がいなくたって、学校生活に問題はないと思うし。
Aは、頭も良いし性格も良い。ただ−執事がいないってだけ」
耳元で囁かれる声。私は、ゆっくりと船津さんの方へ目を向けた。
「め、面会とか…」
「残念ながら、それはできない。学院生が執事学校へ行くことは許されてないから」
私は、この先どうしたら−。
勉強で上位の成績をキープできていたのは、小笠原さんの勉強会のおかげ。小笠原さんがいなければ、私は…。
「なんで、委員会に呼び戻されたんですか…?」
震える唇で、私はすぐ近くにいる船津さんに声をかける。
「…こんなことを言うのは心苦しいけど、Aのカンニング疑惑が取り上げられたらしい。
執事としての責務を果たせていないとみなされ、呼び戻されたってところかな。
カンニングの犯人さえ分かれば、Aの濡れ衣も晴れるし海も執事として復帰することができるんだけどね…」
木の葉たちが、ざわざわと騒ぎ出す。私の心も、ざわざわと騒ぎ始めた。
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桜月(プロフ) - うめこんぶさん» わわ!ご指摘ありがとうございます(;´Д`A 引き続き、良い小説が書けるよう頑張ります!よろしくお願いします!d( ̄  ̄) (2018年12月23日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
うめこんぶ(プロフ) - 更新ありがとうございます!126話と127話が抜けてると思いました。これからも楽しみにしています! (2018年12月23日 1時) (レス) id: 0ab6ffd78b (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ぱにぱにこちゃんさん» コメントありがとうございます・:*+.\(( °ω° ))/.:+ ゆるゆるっとですが、更新しますのでぜひ!よろしくお願いいたします♪ (2018年12月1日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
ぱにぱにこちゃん(プロフ) - 更新待ってますっ! (2018年6月17日 7時) (レス) id: e09c37547f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SORA | 作者ホームページ:https://twitter.com/SORA_39xx
作成日時:2018年5月29日 19時