第133話 冷たい空気と何か ページ40
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「(…すっかり静かになったな、自分の部屋)」
温かいご飯も紅茶の香りも––海さんの笑顔もない。ものすごく寂しい気分になった。
おかえり。と、帰って来ない冷たい家と同じ。
私は、引き出しの奥にしまってある紙を1枚手に取った。
借用書を見れば、両親の借金は1億円にものぼる。正直、私が一生働いたってこんな大金を返すのは難しい。
「(でも––)」
船津さんといれば、この借金を返すことも––間接的だけど海さんのそばにいることもできる。
すごく魅力的なのに、即答できないのはなぜだろうか。むしろ、直前で裏切られるんじゃないだろうか。
船津さんという頼みの綱が切れた時点で、私はどうなってしまうのか。
「(生きていたら––まだ良いよね…)」
緩む視界。私は思わず、皺1つない借用書を握りつぶした。
*
「…稜雅」
間をたっぷり開けた後、今度ははっきりかつ口調を崩した海。
稜雅は小さく微笑みながら、首を傾げた。
「俺とAさまの弱みを握って、何をする気なんだ?」
「何も? 俺はただ、お前たちの手助けがしたくて」
Aさまが入学して以来、稜雅の様子がおかしい。
「…Aさまの評判を落としたり、手助けしたり––。
はっきり言って、お前の意見を素直に聞くことはできない」
これにもきっと裏がある。––俺はそう確信していた。
「ずいぶんとひどい言い草だなー。Aの評判が落ちたのは、俺のせいじゃない。
海の、監督不行き届きのせいだろ?」
監督不行き届き–
そう言われてしまうと、俺は何も言い返せなくなる。
「俺の提案にYESと答えてくれれば、Aにも海にも不自由はさせないよ」
しばらく考えてみて。と、稜雅は言い残して執事部屋を出た。
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桜月(プロフ) - うめこんぶさん» わわ!ご指摘ありがとうございます(;´Д`A 引き続き、良い小説が書けるよう頑張ります!よろしくお願いします!d( ̄  ̄) (2018年12月23日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
うめこんぶ(プロフ) - 更新ありがとうございます!126話と127話が抜けてると思いました。これからも楽しみにしています! (2018年12月23日 1時) (レス) id: 0ab6ffd78b (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ぱにぱにこちゃんさん» コメントありがとうございます・:*+.\(( °ω° ))/.:+ ゆるゆるっとですが、更新しますのでぜひ!よろしくお願いいたします♪ (2018年12月1日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
ぱにぱにこちゃん(プロフ) - 更新待ってますっ! (2018年6月17日 7時) (レス) id: e09c37547f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SORA | 作者ホームページ:https://twitter.com/SORA_39xx
作成日時:2018年5月29日 19時