第126話 嘘まみれのワタシ ページ33
.
誰かに肩を揺すられ、ゆっくりと目を開けた私。
「…Aさま…」
そう言いながら、私の顔を覗き込んだのは海さんだった。
「うーん…海、さん…?」
海さんは優しく微笑むと、私が寝ているベッドの端に腰掛けた。2人分の体重が乗り、さっきよりも沈む。
「具合は、いかがですか」
そう言いながら、手の甲で私の頬を撫でた。
「なんとか…。ちょっと、腹痛がひどいですけど…」
笑顔を見せたつもりだったのに、海さんの顔が途端に悲しい表情へ変わった。
「…申し訳ありません…」
苦しそうな、息がつまりそうな海さんの声。
「海さんが謝ることじゃないですよ。これは…しょうがないことですから」
性別上、これはしょうがない。そりゃ、たしかに具合はあまり良くないけど…。海さんが謝る必要はない。
「…いえ、私がこうして––Aさまのお側にいられないのは…私の不徳が原因です…。
目の前に––困ってる人が––いるのに、手助けができないなんて…」
海さんの目に、後悔や怒りやもどかしさが垣間見える。
「…謝るのはこっちの方です。私のせいで…海さんが…」
一瞬だけ、入院したことを後悔した。私の嘘が大きな嘘になり、ここまで海さんを傷付けてしまうものだなんて…思いもしなかった。
「Aさま…。ここへ入院されたこと、まさか後悔されてるのですか?」
優しい口調で問いかける海さん。私は、間を開けてから小さく頷いた。
「…後悔、というより––もっと他の道はなかったのかなって…考えてます」
ここまで良くしてくれてる海さんに、私は嘘をついている。
…それに––佑亮くんや拓弥、晃一にも。私は、学院にいる人全員に––とんでもない嘘をついている。
罪悪感がないわけではない。でも、こうしないと…自分の将来は消え去るから。
「(この嘘たちが、周りにバレたらどうなるんだろう)」
考えつかない未来に、私は慄いた。
第127話 オンナノコだから→←第125話 増えた苦労と人影
179人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜月(プロフ) - うめこんぶさん» わわ!ご指摘ありがとうございます(;´Д`A 引き続き、良い小説が書けるよう頑張ります!よろしくお願いします!d( ̄  ̄) (2018年12月23日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
うめこんぶ(プロフ) - 更新ありがとうございます!126話と127話が抜けてると思いました。これからも楽しみにしています! (2018年12月23日 1時) (レス) id: 0ab6ffd78b (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ぱにぱにこちゃんさん» コメントありがとうございます・:*+.\(( °ω° ))/.:+ ゆるゆるっとですが、更新しますのでぜひ!よろしくお願いいたします♪ (2018年12月1日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
ぱにぱにこちゃん(プロフ) - 更新待ってますっ! (2018年6月17日 7時) (レス) id: e09c37547f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:SORA | 作者ホームページ:https://twitter.com/SORA_39xx
作成日時:2018年5月29日 19時