検索窓
今日:15 hit、昨日:5 hit、合計:32,759 hit

第121話 後悔、先に立たず ページ28

.

「良かった…。何もされてなくて…」

久々に聞いた、海さんの砕けた口調。海さんは言い終えると、私から離れる。そして、生卵をぶつけられた私の髪の毛や顔をそっと親指で撫でた。

刹那、ひどく顔を歪めた海さん。眉根を寄せたあと、私の目を見た。

「ひどい…。顔の傷…」

まだ若干の痕は残っているものの、私の顔の傷はそこまで目立たない。…多少の色素沈着はしているけど。

「大丈夫です。ありがとうございます」

海さんが心配してくれたのが純粋に嬉しくて。私は、自然と笑顔を向けた。

「じゃあ…もう行きますね。午後の授業が始まっちゃう」

ジャケットのお礼を付け加えて、私は海さんの横を通り過ぎる。

聞けば良かった。今朝のこと−。

船津稜雅のときとは違う、気持ちまで暖かくなる心臓音が少し心地良かった。



午後は海さんのジャケットを着て過ごし、いまは–下校–の時間。

バッグの中へ教材を詰めている私を、佑亮くんは手を止めながら見ていた。

「そのジャケット…海さんの?」
「えっ?うん!」

おずおずと口を開いた佑亮くん。私は、突然声をかけられたことに驚きつつ、言葉を返した。

「そっかあ…」

そう言いながら、やけにしょんぼりした様子で自分の手元を見る佑亮くん。

「僕も、海さんみたいに–Aくんにジャケット貸せば良かったなあ…」
「それは佑亮くんに悪いから平気だよ!その気持ちだけで充分!」

落ち込んでいる様子の佑亮くんを励まそうと、私は至極明るく努めて話す。

佑亮くんのジャケットを借りたら、色んな人から驚かれそうだし…。佑亮くんには、そんな思いをして欲しくない。

「じゃあ、もう行くね!自分のジャケット、クリーニングに出さないと」

佑亮くんに手を振りながら、自分の席を立つ私。

「あっ、待っ–」

そう言いながら、佑亮くんは私の腕を引く。その瞬間、足がもつれてしまい、教室の床に2人して倒れ込んだ。

佑亮くんの左手が私の後頭部に回っていたおかげか、幸い頭を打たなかった。

「ごっ、ごめん…。ケガしてない?」

そう言いながら、至近距離で私を見つめる佑亮くん。ぱっちりした目が、とても可愛い。

「うん。佑亮くんのおかげで、俺の頭は無事だよ」

そう言いながら、立ち上がろうと自分の身をよじったとき–顔に、熱くて冷たい何かが当たった。

第122話 まるで家族のよう→←第120話 反比例してく情景



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (56 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
179人がお気に入り
設定タグ:超特急 , 男装
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

桜月(プロフ) - うめこんぶさん» わわ!ご指摘ありがとうございます(;´Д`A 引き続き、良い小説が書けるよう頑張ります!よろしくお願いします!d( ̄  ̄) (2018年12月23日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
うめこんぶ(プロフ) - 更新ありがとうございます!126話と127話が抜けてると思いました。これからも楽しみにしています! (2018年12月23日 1時) (レス) id: 0ab6ffd78b (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ぱにぱにこちゃんさん» コメントありがとうございます・:*+.\(( °ω° ))/.:+ ゆるゆるっとですが、更新しますのでぜひ!よろしくお願いいたします♪ (2018年12月1日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
ぱにぱにこちゃん(プロフ) - 更新待ってますっ! (2018年6月17日 7時) (レス) id: e09c37547f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:SORA | 作者ホームページ:https://twitter.com/SORA_39xx  
作成日時:2018年5月29日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。