第116話 心の傷跡の治療も ページ23
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「では、目をつぶってください」
海さんに促され、私は言われた通り目を瞑る。それから、海さんはそっと私の顔に触れた。
消毒液をポンポンと傷口に染み込ませた後、私の顔に何かを塗り込む。ツンとした刺激臭がした。
「…口の中、見せてください」
「えっ、口の中でーですか?」
驚きを隠せない私に、海さんは至極機械的に答える。私は、恥ずかしさを飲み込んで傷が痛まない程度に口を開けた。
「…そのままでいてください」
海さんはそう言いながら、私の舌を指で軽く押し込む。ふわっと、また消毒液じゃないー海さんの香りが漂った。
唇の横に、柔らかい何かが優しく当たる。脱脂綿か何かと思い、特に気にせず目を瞑ったままジッとしていた。
何かは私の口の中に入り、優しく触れ回る。唇にぴったりと張り付いているコレはなんだろう。いつの間にか、舌を抑えていた指はなくなっていた。
「(これ、本当に脱脂綿…?)」
目を開けようとすれば、海さんの大きな手が私の目元を塞ぐ。
「…口内の傷の手当てをしているので、動かないでください」
海さんにそう言われ、私はジッとせざるを得なかった。
自分の唾液が脱脂綿に染みているのか、妙に生暖かい何かが私の口内を這いずり回る。
私がフラフラしていたのか、海さんはがっちりと私の後頭部を支えながら、さっきよりも少し奥の方へ何かを優しく這わせた?
「…Aさま。唾液を出すために、少々舌を絡ませてください」
すぐ近くで声がした。私は小さく返事をすると、口の中を優しく這う何かに舌を絡める。
妙にー意思を持って動いているような気がした。
私の後頭部を支える海さんの手が、さっきよりもきつくなる。口の中に這う何かは、徐々に激しさを増した。それに伴い、妙な音まで響いてくる。
だけど、私は抵抗することなくー海さんの言う通りにジッとしていた。
後頭部を強く支えられ、気がつけば海さんとの距離は0cm。ぴったりと、私の体に貼り付いた海さんの鼓動を強く感じる。海さんの鼓動が響く度に、私の体にびりびりとした電流が駆け巡った。
ここまで来れば、私は海さんに何をされているかもう分かっていた。
だけど–だけど、今だけは–
何も分からない–知らないふりをさせて–
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桜月(プロフ) - うめこんぶさん» わわ!ご指摘ありがとうございます(;´Д`A 引き続き、良い小説が書けるよう頑張ります!よろしくお願いします!d( ̄  ̄) (2018年12月23日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
うめこんぶ(プロフ) - 更新ありがとうございます!126話と127話が抜けてると思いました。これからも楽しみにしています! (2018年12月23日 1時) (レス) id: 0ab6ffd78b (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ぱにぱにこちゃんさん» コメントありがとうございます・:*+.\(( °ω° ))/.:+ ゆるゆるっとですが、更新しますのでぜひ!よろしくお願いいたします♪ (2018年12月1日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
ぱにぱにこちゃん(プロフ) - 更新待ってますっ! (2018年6月17日 7時) (レス) id: e09c37547f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SORA | 作者ホームページ:https://twitter.com/SORA_39xx
作成日時:2018年5月29日 19時