第114話 顔と心に残る傷跡 ページ21
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佑亮くんからの応急処置を受けて放置された私は、とりあえず自分の教室へ向かった。
ふと、窓に映った自分の顔を見ればー全体的に青紫色になって腫れ上がっていた。
「(…これ、痕にならないかな…)」
そんな心配をしながら、私は保冷剤で顔を冷やす。
のんびりした足取りで教室に向かえば、ギョッとした顔で私を見る佑亮くんを除いたクラスメート。…そしてー
「(か、海さん…!)」
教室の端に待機している海さんは、私の方を見た後に大きく目を見開いたものの、すぐ涼しい顔に戻った。それがひどく、私の心を締め付ける。
「…事情は聞いてるわ。とりあえず、自分の席に着きなさい」
そう言いながら、着席を促す教員。私は、アザだらけの顔に保冷剤を押しつけながら自分の席に腰かけた。
「…では、まず222ページを…」
教員が指示する教科書のページをめくる。細かい文字で文章が書かれている教科書のページには、私を罵倒する言葉でぎっちり埋められていた。
「じゃあ、Aさん。読んでちょうだい」
こんな時に限って、タイミングが悪すぎる。私は席を立ちながら言った。
「ケガしてるので文字が読めないです」
そんな私の発言に対して、小さく息を吐いた教員。
「Aさん、あのねえ…。もういいわ。祐基さん、読んでちょうだい」
私は海さんに教科書の落書きを見られないよう、わざと片開き扉だけを立てて壁を作った。
「(よくもまあ、ここまで…)」
傷が痛むのもあって、今日はなかなか授業に集中できない。
佑亮くんは、さっきのことがあって気まずいのか、私の顔色を伺っている。でも、挙動不審とも思えるその姿や視線に、私は彼なりの優しさを強く感じた。
*
今日の授業がすべて終わり、教科書をしまおうとスクールバッグに手を伸ばす。
「Aさ–」
「海。早く行こう。次に予定がある」
私を引き止めた海さんの声が、一瞬だけ耳に届く。その声に、不覚にも胸が高鳴った。
しかし、そんな海さんの声を遮った綾雅。残念な気持ちを抱えつつ、海さんは短く返事をした後に綾雅よりも先に教室を出て行った。
「あの…さっきの–保健室のこと…、ごめんなさい…」
しゅんとうなだれる佑亮くん。
「…良いって。気にしてないから」
そう答えながら、私は応急処置のお礼と交えて一緒に帰宅の道を帰って行った。
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桜月(プロフ) - うめこんぶさん» わわ!ご指摘ありがとうございます(;´Д`A 引き続き、良い小説が書けるよう頑張ります!よろしくお願いします!d( ̄  ̄) (2018年12月23日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
うめこんぶ(プロフ) - 更新ありがとうございます!126話と127話が抜けてると思いました。これからも楽しみにしています! (2018年12月23日 1時) (レス) id: 0ab6ffd78b (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ぱにぱにこちゃんさん» コメントありがとうございます・:*+.\(( °ω° ))/.:+ ゆるゆるっとですが、更新しますのでぜひ!よろしくお願いいたします♪ (2018年12月1日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
ぱにぱにこちゃん(プロフ) - 更新待ってますっ! (2018年6月17日 7時) (レス) id: e09c37547f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SORA | 作者ホームページ:https://twitter.com/SORA_39xx
作成日時:2018年5月29日 19時