第106話 柔和な表情と口元 ページ13
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「いた…っ」
ずきずき痛む頭。ゆっくり目を開ければ、目の前にはすっかり見慣れた天井がある。
「(…部屋?)」
慌てて起き上がれば、ずきん!と激しい痛みが走る。私は頭を抑え、ゆっくりと周りを見渡した。
「…お前、いつも無茶するよな」
そう言いながら、私のいるベッドに腰掛けた草川拓弥。
「あと、頭のケガ受けすぎ。ただでさえバカなのに、それ以上バカになってどうすんだよ」
ぶっきらぼうで冷たい言葉。だけど、不快感を感じなかったのは−目の前にいる草川拓弥は笑ってるから。
「草川さん…」
ぽつりと名前を呟く私。
「教室の忘れ物を取りに行こうとしたら、桜庭のデカい声が聞こえてきてさ。
様子を見に行ったら、階段の下で血を流してたからお前の部屋まで運んで来た」
そう言い終えると、草川拓弥は私の前におかゆを差し出す。
「…小笠原さんが作ってくれたおかゆ」
どくん、とまた心臓が脈打つ。
「…さすがに、俺1人でお前を運ぶのはしんどかったから。
近くにいた小笠原さんと一緒に、部屋まで運んだんだよ。
お前が意識を失ってる間、小笠原さん…すごく焦ってたぜ」
小笠原さんが、あの場に居た…?
「(気が付かなかった…)」
そっと包帯に手を触れる私。じんわりと胸が温かくなるのを感じる。
「…」
そんな私をじっと見つめる草川さん。
「あのさ…さっきの言葉…、ありがとうな。すごく嬉しかった」
−さっきの言葉
と聞いた私は小さく笑った。
「俺は、ただ本音を言ったまでです。それに…草川さんとは、これからも仲良くやりたいですし」
「草川さんにたまに手紙を送るので、宛先を教えてください!」そう言った私に対して、草川さんは優しい笑顔を浮かべる。
「拓弥、で良いよ。またな、A」
草川さんは最後にそう言うと、静かにベッドから離れる。私はそんな草川さんの姿を、部屋を出る最後の瞬間まで見届けた。
ぱたん、と閉まるドア。私は、自分の手の中にあるおかゆに目を移して、一口食べた。
懐かしい味に、ほろりと涙が出る。
「(美味しい…)」
小笠原さんのおかゆを堪能していると、こんこんとドアがノックされる。
「(草−拓弥さんかな…)」
私は涙を拭き、おかゆをサイドテーブルの上に置くとゆっくりとドアを開けた。
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桜月(プロフ) - うめこんぶさん» わわ!ご指摘ありがとうございます(;´Д`A 引き続き、良い小説が書けるよう頑張ります!よろしくお願いします!d( ̄  ̄) (2018年12月23日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
うめこんぶ(プロフ) - 更新ありがとうございます!126話と127話が抜けてると思いました。これからも楽しみにしています! (2018年12月23日 1時) (レス) id: 0ab6ffd78b (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ぱにぱにこちゃんさん» コメントありがとうございます・:*+.\(( °ω° ))/.:+ ゆるゆるっとですが、更新しますのでぜひ!よろしくお願いいたします♪ (2018年12月1日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
ぱにぱにこちゃん(プロフ) - 更新待ってますっ! (2018年6月17日 7時) (レス) id: e09c37547f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SORA | 作者ホームページ:https://twitter.com/SORA_39xx
作成日時:2018年5月29日 19時