第95話 忍び寄る、魔の手 ページ2
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教室に入るのが怖い。
ばくばくと高鳴る心臓を抑えながら、私は佑亮くんの話に頷いていた。
「おはよー!」
教室に着いた瞬間、大きな声で挨拶をする佑亮くん。皆が一斉にこっちを見た。…もちろん、船津稜雅も。
船津稜雅は私をちらりと見た後、小さく微笑んだ。まるで、「何も言うな」とでも言うように。
教室の空気が一気に気まずくなる。そんな空気の中、静かに立ち上がったのは村田祐基だった。
「桜庭。ちょっと良いかな」
そう言いながら、私に声をかける村田祐基。
「は、はい…」
私は情けない返事をしたあと、佑亮くんに「また後で」と小さく声をかけて村田さんの後を追った。
*
以前にも訪れた、大きなバルコニー。私が、初めて村田さんと会った場所。
頰を撫ぜる風が気持ち良い。目の前には、広がる青空を流れる雲と花畑が風に揺れて踊っていた。
「…桜庭はさ」
そう言いながら、ぽつりと話を切り出した村田さん。
私はばくばく鳴る心臓に気がつかないふりをしながら、その言葉の続きを待った。
「佑亮のこと好き?」
村田さんの口から出たのは、当たり前の質問。私が想像していた質問じゃなかったことに、ホッと胸をなで下ろす。
「はい。…それに、友達として信頼しています」
この質問に関して、私ははっきりと答えた。
「佑亮はさ…、いつも何かに悩んで1人で抱え込んじゃう性格なんだ。だから…佑亮のことをよく見て欲しくて。
俺はあの時−何もできなかったから。佑亮が悩んでることに、気が付けなかったから…」
そう言った村田さんの寂しそうな表情。
きっと村田さんがいま言ったことは、誘拐未遂事件の時の話なのかもしれない。
「(もしかしたら−あの時…)」
船津さん、草川拓弥と教室でケンカしてた時。佑亮くんの悩みに気が付けなかった自分自身に、一番怒っていたのかもしれない。
突然、背後からこんこんと響くノックの音。私たちは、音の方に目を向けた。
壁に寄りかかっている吉野晃一がいた。
「始業10分前や。はよ戻り」
吉野晃一はそれだけ言うと、教室へ戻る。私たちも、吉野晃一の後に続いてバルコニーを出た。
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桜月(プロフ) - うめこんぶさん» わわ!ご指摘ありがとうございます(;´Д`A 引き続き、良い小説が書けるよう頑張ります!よろしくお願いします!d( ̄  ̄) (2018年12月23日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
うめこんぶ(プロフ) - 更新ありがとうございます!126話と127話が抜けてると思いました。これからも楽しみにしています! (2018年12月23日 1時) (レス) id: 0ab6ffd78b (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - ぱにぱにこちゃんさん» コメントありがとうございます・:*+.\(( °ω° ))/.:+ ゆるゆるっとですが、更新しますのでぜひ!よろしくお願いいたします♪ (2018年12月1日 1時) (レス) id: 3c689d561d (このIDを非表示/違反報告)
ぱにぱにこちゃん(プロフ) - 更新待ってますっ! (2018年6月17日 7時) (レス) id: e09c37547f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SORA | 作者ホームページ:https://twitter.com/SORA_39xx
作成日時:2018年5月29日 19時