54 ページ9
「赤井」
「秀一」
「あの、赤井」
「秀一」
「……赤」
「秀一だ」
「……何の遊びだ、楽しいかこれ」
「違う!」
ソファーに座ったまま呆れたように俺を見るA。楓は成仏と似たような形で存在を自分自身で消した。あれ以来、あることを除けば、特にAに目立った変化は見られない。
そう、あることを除けば。
「近い、離れろ」
隣に腰掛けただけでこれだ。
今までは肩を抱こうが腰を抱こうが平然としていたのに。
〈赤井は腕は疲れないのか〉
〈むしろ癒やされている〉
〈なら構わん〉
なんて言っていたのに。
照れ隠しかと思ったが、氷点下の笑顔でやめろと言われた。俺が見たい笑顔はあの氷点下の笑顔ではない。あれは怖かった。
「分かった。だが…そろそろ名前で呼んでくれないか」
「…名前?」
「そうだ。俺は君をAと呼んでいる。だがAは赤井としか呼んでいないだろう?」
「…それは、そうだが……」
悩む仕草をして、しばらく唸っていたAだったが、1つ軽いため息をつくと、俺と目をしっかりと合わせた。
「…し、しゅ……しゅう…」
「あぁ」
ふいと逸らされた顔を戻す為に、頬に手を添えてこちらを向かせた。
顔がじわじわと赤らんでいくのを見て可愛いと思う俺は、やはり彼女に惚れているのだと実感させられた。
「しゅう、いち………」
「あぁ」
俺の手を握って下を向いたと思ったら、小さくAは、さん、と言った。
「何で急にさん付けになるんだ」
「……」
急に黙り込んだAに不安になり、顔を覗き込めばその顔は真っ赤だった。
「……今更ながら…赤井…貴方に、惚れていると言ったら、貴方は笑うか…?」
「……ん?」
「だからッ……今までは、一緒にいると安心する、という感じだったんだが…今はその、心臓が、うるさくて……蘭ちゃんに話したら、それは恋だと…」
あぁ、だからか。
最近やたらと距離を置きたがったり、スキンシップを拒んだりしていた理由はこれか。
「笑わんよ。俺は嬉しいよ、惚れた女に惚れてもらえたのだから」
抱きしめれば、小さく肩を揺らしたものの、抱きしめ返してくれる。
普段は落ち着いた脈だったのが、今はとても早くて、俺をしっかりと異性として意識してくれているのだと嬉しくなった。
624人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユキ(プロフ) - さちさん» コメントありがとうございます。個人的にとーる君は書いていて楽しいので、この話が一段落しても出てくるかもしれません( ̄∇ ̄*) (2019年3月29日 22時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろかったです。続きがすごく気になりました。よろしくお願いします。 (2019年3月29日 22時) (レス) id: 1af3590574 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 奈楠さん» ありがとうございます。学業も忙しくなりますので更新ができない日々もあると思いますが、作品をよろしくお願い致します。コメント嬉しいです(о´∀`о) (2019年3月15日 12時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 受験お疲れ様です!!!作者様のペースで大丈夫ですよ!更新頑張ってください! (2019年3月14日 21時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - 明里香さん» 教えて下さりありがとうございました!修正しました。閲覧ありがとうございます。 (2018年8月3日 7時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユキ x他1人 | 作成日時:2018年5月20日 18時