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「…うん、もう大丈夫でしょう。なにか不安なことや、困ったことなどあればいつでも来てください」
「はい」

医者は1つため息をつくと、ひどく安心したように眉を八の字にして笑った。

「いやぁ、本当に吃驚しました…麻酔を打っても効かなくて、普通の人だったらトラウマになってもおかしくないのに…」

二十代後半から三十代前半の顔をしている、普段はぽやんとした感じの先生。フワフワとした話し方は、一緒にいて気が抜けそうだ。

沖矢昴から赤井秀一要素をすべて出し切った感じの…うん、ぽやぽやした感じとしか言えない。
背景には幼児が描いた花でも浮かんでいそうな人、とでも言うべきだろうか。

「愛の力は偉大ですねぇ」
「…そうですね、私は…彼が大好きなので」
「それは嬉しいですね、僕はあなたを愛していますよ」

後ろから聞こえてきた声に、身体が警報を鳴らした。ちょっと待て、私は今かなり恥ずかしいことを言ったんじゃないか?
というかこの先生の雰囲気に呑まれて赤井…沖矢がいることをすっかりと忘れていた。

「…あー…」
「忘れて下さい、お願いですから」

カルテを両手で持ったままどうしていいか分からないと言うように狼狽える先生に言えば、先生は右手でペンを持とうとしてカターンと落とした。

「だ、大丈夫ですよ〜、いいですねぇ。僕もいつか貴方達みたいに素敵な関係になりたいなぁ…あ、僕恋人居ないんでした…なんでだろ、いつも弟みたいに見られるんですよね〜」

ほんのりと赤く染まっていた先生の顔は、最後の一言によってしゅんとした顔になった。

ぷるぷると顔を横に振った先生は、にぱっと笑顔になって、引き出しから処方箋と書かれた袋を手に取って私に渡した。

「沖矢さん、柊さんも、お互いを大切にすることは良いですけど、自分も大切にして下さいね。退院おめでとうございます」

紙袋には、退院おめでとうございますの文字と可愛らしい私達の似顔絵が描かれていた。

「ありがとうございます」

昔は脆くて嫌っていたはずの人との繋がりは、いつの間にかこんなに嬉しいと思えるようになったのだ。

それらにはいつも赤井がいて、彼といる時は新しいことばかりだ。

診察室から出て、病院をあとにする。
手を引いてくれる彼の存在は、必要不可欠だ。

「…赤井は私の知らない色んなことを知ってるんだろうな」
「そうかもしれないな。でも、俺が知らないことを、君が知っていることだってあるさ」

きっと互いに。

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ユキ(プロフ) - さちさん» コメントありがとうございます。個人的にとーる君は書いていて楽しいので、この話が一段落しても出てくるかもしれません( ̄∇ ̄*) (2019年3月29日 22時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろかったです。続きがすごく気になりました。よろしくお願いします。 (2019年3月29日 22時) (レス) id: 1af3590574 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 奈楠さん» ありがとうございます。学業も忙しくなりますので更新ができない日々もあると思いますが、作品をよろしくお願い致します。コメント嬉しいです(о´∀`о) (2019年3月15日 12時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 受験お疲れ様です!!!作者様のペースで大丈夫ですよ!更新頑張ってください! (2019年3月14日 21時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - 明里香さん» 教えて下さりありがとうございました!修正しました。閲覧ありがとうございます。 (2018年8月3日 7時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユキ x他1人 | 作成日時:2018年5月20日 18時

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