73 ページ28
「A…！」
病室に駆け込んできた赤井を､降谷は少し睨む｡
どうやら赤井の声でAが眠りから覚めてしまったらしい｡
まだぼんやりとした意識のようだが､赤井を見た柊は､まるで子供が抱っこをせがむように両手を広げた｡ベッドから起き上がることはできないため､赤井は上半身を覆い被せるようにしてその体を優しく､壊れないように抱き締めた｡
「A…？」
再び瞼を閉じた柊に､赤井は頬を緩めた｡
柊の頬を撫でてやれば､すり寄ってくる｡
「現在記憶が戻っているかどうかは定かではありませんが､戻る可能性は高いです｡まぁ､この後の検査がありますがね」
赤井はそれを聞くと､柊の頭を撫でてやると､真剣な顔つきで部屋の扉を引いた｡
「止めませんよ」
赤井がその場で歩みを止めた｡
降谷は腕を組んで､目を閉じている｡
「僕らは何も見ていませんし､何も聞かなかった｡ただ､これから何をしても貴方の自己責任ということをお忘れなく」
「…分かった」
風見が降谷を見ると､ゆっくりと目を開いた｡
「いいんですか降谷さん」
「日本警察は充分な情報を得た｡それに奴は､犯人の喉笛に噛み付く準備ができた頃だ｡赤井は犯人を殺しはしないさ､
「FBIに身柄を渡すんですか！？」
焦った顔を見せる風見に､降谷は余裕の笑みを浮かべた｡
「風見､奴らの中に鼠がいただろう？」
「…見せしめですか」
「…僕は柊さんを巻き込んでしまった｡赦されないことだ」
「そんなことはない」
会話に割り込んできた声に､二人は目を見開いた｡上半身を起こして､顔色は悪いが笑みを浮かべる柊がそこにいたからだ｡
「柊さん…記憶が…？」
ふっと笑った柊に､降谷は思わず泣きそうな顔をした｡
「あぁ､すべて戻った」
すみませんと言いそうになった降谷が口を前に､柊は頭を下げた｡
「私が勝手に首を突っ込んで､勝手に怪我をした｡迷惑をかけた｡すまない」
「顔を上げてください｡元々は僕が原因です｡貴方が来てくれなかったら､僕は死んでいたかもしれない…貴女が頭を下げる必要なんて､何処にもない｡すべきは､こちらの方です」
頭を下げようとする降谷の顔を両手ではさんで､柊は掬い上げるように顔を上げさせた｡
「謝らなくていい｡そういうのは好きじゃない」
それを聞いて､降谷は悲しそうな目をした｡
僕には謝ることも赦されないのか､と｡
「…一つ頼みたい」
「私に､身を守る
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 624人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユキ(プロフ) - さちさん» コメントありがとうございます｡個人的にとーる君は書いていて楽しいので､この話が一段落しても出てくるかもしれません(￣∇￣*) (2019年3月29日 22時) (
レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろかったです。続きがすごく気になりました。よろしくお願いします。 (2019年3月29日 22時) (レス) id: 1af3590574 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 奈楠さん» ありがとうございます。学業も忙しくなりますので更新ができない日々もあると思いますが、作品をよろしくお願い致します。コメント嬉しいです(о´∀`о) (2019年3月15日 12時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 受験お疲れ様です！！！作者様のペースで大丈夫ですよ！更新頑張ってください！ (2019年3月14日 21時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - 明里香さん» 教えて下さりありがとうございました!修正しました｡閲覧ありがとうございます｡ (2018年8月3日 7時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユキ x他1人 | 作成日時：2018年5月20日 18時
