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「うわぁ…沢山書きましたね…」
風見は､ノートを見て驚いていた｡
ノートは降谷がAにあげたもので､筆記用具や色鉛筆まで揃っていた｡漢字や絵を自由に書いていいというものらしい。
ノートには､沢山の絵と文字。
一ページずつ捲り眺めていくと､やはり降谷が言っていた通り､赤井秀一に関するものはとても綺麗に書けていたのだ｡
先日赤井のデスクに珍しく息を切らして来た降谷は､赤井に彼女が書いたという[赤井秀一]という文字が書かれた紙を片手に､「会いに行くべきだ」と意見を主張した｡
けれど､何か彼自身感じるところがあるのか､頑としてその意見を受け入れることはなかった｡
今では降谷と風見が様子を見ているのだ｡
まだ一週間｡されど一週間だ｡
言葉は大分流暢に話せるようにはなっているが､日に日に､記憶が戻るのかどうか不安は増してきていた｡
不意に､風見がページを捲る手が止まった｡
それを不思議に思ったのか､柊は風見をじっと見つめた｡
「…なぜ､この文字を？ もう十分上手に書けているのに」
ノートには､沢山の漢字が書かれている｡
新しく知った言葉､言い回し､例え｡
人の名前､物の名前､天気や動物の名前｡
ノートは、既に５冊目に入っていた｡
けれどそのどれにも､どのページにも､必ず[赤井秀一]の文字がある｡
柊は燕の雛が餌をねだることと同じように､知識を求めた｡今では英語の本を日本語の小説と同時進行で読み進めている｡そんな彼女が､新しい知識を求めるなかで､その四つの漢字だけは毎ページ欠かさない。
風見の､素朴な疑問だった｡
「…分からない」
風見が､そうですか､と言いそうになったとき､柊がぎゅっと自身の服の裾を細い指で掴んだ｡
「ただ､忘れそうになるから」
「…忘れたくないですか？」
風見の問いに､小さく頷いた｡
「……誰かが泣くから」
「誰か？」
「顔は見えない｡霧がかかっているように見えないけど､泣いているのは分かるから｡[忘れないで]ってその人が泣くから｡私はその人が泣かないようにしたい」
泣いているのは誰なのだろう｡
赤井秀一か､それともA自身か｡
「裕くん」
零くん､裕くんと彼女は彼らを呼ぶ｡
外見も話し方も大人びているせいで､普通の事情を知らない人間なら彼女が記憶喪失だとは気づかない｡
「楓は何処」
「かえで…ですか？」
「…何でもない」
部屋には､カメラが設置されている｡
今の会話は､降谷と赤井も聞いていた｡
赤井は､驚愕に打たれていた｡
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ユキ(プロフ) - さちさん» コメントありがとうございます｡個人的にとーる君は書いていて楽しいので､この話が一段落しても出てくるかもしれません(￣∇￣*) (2019年3月29日 22時) (
レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろかったです。続きがすごく気になりました。よろしくお願いします。 (2019年3月29日 22時) (レス) id: 1af3590574 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 奈楠さん» ありがとうございます。学業も忙しくなりますので更新ができない日々もあると思いますが、作品をよろしくお願い致します。コメント嬉しいです(о´∀`о) (2019年3月15日 12時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 受験お疲れ様です！！！作者様のペースで大丈夫ですよ！更新頑張ってください！ (2019年3月14日 21時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - 明里香さん» 教えて下さりありがとうございました!修正しました｡閲覧ありがとうございます｡ (2018年8月3日 7時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ユキ x他1人 | 作成日時：2018年5月20日 18時
