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「………」

一通りの説明を終えて静まり返る部屋には、Aの呼吸の音だけが響く。額を組んだ手の甲に乗せて深くため息をつく。赤井の目の前には、腕時計があった。

「すみません、すみません赤井…謝って許されることではありませんが…」

憔悴したように見える赤井が、悔しそうに唇を噛む降谷の側を無言で通る。
自身の情けなさに拳を握りしめた降谷の肩に温かく大きい何かが置かれた。

赤井の手だった。

「俺が惚れた女は、君という個を見捨てようとはしなかった。個より全を優先する君を」

かつて降谷は赤井の同僚に言ったことがあった。
合同捜査で行動を共にしたFBI捜査官が、降谷の顔色の僅かな変化に気付き、それを指摘してきた時だった。

【少しは休んだ方が…日本人は無理をしすぎます】

【俺という一人の存在が休んだ時間で、何人もの命が消えるかもしれない。個より全を優先する。この職に就いたときからそれは変わらない】

それを思いだし、降谷は目を見開いた。

「それなら、俺は個を守った彼女を守り、彼女にならって全が為に戦う個を守る」

降谷は小さく、ほとんど唇だけの動きで赤井に問いかけた。「どうして」、と。

「Aが起きていたら、きっとそうしたからだ」

真っ直ぐに自分に言葉を紡ぐ赤井に、降谷は悔しそうな、嬉しそうな、泣きそうな顔をして前髪をくしゃりとかきあげた。

「僕の周りにいると、不幸になります。今までだってそうです。大切だと思ったら、必ず死が訪れる。今回はそうではなかった、けどいつかまた…」

「君が運んだのは、死じゃなくて幸福だ」

思わず、黙った。
視線をあげれば、困ったように笑う赤井。

「…赤井?」

「Aならそう言う。Aが起きて記憶が戻ったら、今と同じことを言ってみろ。君に当てはまる答えが返ってくる」

きっと、とか、だろう、とか。
推測ではなくて、断言したのだ。この男は。

「そうなら、頑張らないと」

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ユキ(プロフ) - さちさん» コメントありがとうございます。個人的にとーる君は書いていて楽しいので、この話が一段落しても出てくるかもしれません( ̄∇ ̄*) (2019年3月29日 22時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろかったです。続きがすごく気になりました。よろしくお願いします。 (2019年3月29日 22時) (レス) id: 1af3590574 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 奈楠さん» ありがとうございます。学業も忙しくなりますので更新ができない日々もあると思いますが、作品をよろしくお願い致します。コメント嬉しいです(о´∀`о) (2019年3月15日 12時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 受験お疲れ様です!!!作者様のペースで大丈夫ですよ!更新頑張ってください! (2019年3月14日 21時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - 明里香さん» 教えて下さりありがとうございました!修正しました。閲覧ありがとうございます。 (2018年8月3日 7時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユキ x他1人 | 作成日時:2018年5月20日 18時

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