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「じゃあな、とーる君。元気で」
「うん、またいっしょにりょうりしよう! …じゃあ、げんきで」
寂しそうに笑うとーる君は、赤井が運転席に座る車の後部座席の窓を開けて顔を覗かせていた。
頭を撫でて、一歩さがる。赤井を見れば、私の視線に気づいたのかふっと笑う。いつもの彼(沖矢)だが、少し違和感を感じた。
「ジョディさんにも、よろしく言っておいてくれ」
「あぁ」
車は動きだし、とーる君は車が見えなくなるまでずっと手を振ってくれていた。
家にはいると、朝食で使った食器類が浸けられていて、赤井と自分の他にとーる君がいた今朝の様子が思い出された。
少し、寂しくなった。
それを掻き消すように洗い物を済ませ、洗濯機を回し、家の掃除をした。
ふとソファを見ると、そこにはコートがあった。
先程の違和感の原因だった。
「…忘れ物」
今日は暖かいというが、大丈夫だろうか。
出来心で着てみるとやはり私には大きくて、すっぽりと全身が包まれてしまう。ロングコートということもあって、毛布のような大きさだ。
そのままソファに横になって見ると意外と温かかった。睡魔に勝てず、そのまま眠ってしまったのだ。
---
昼過ぎに帰ってきてみると、家は不自然な位に静かだった。足音をたてないように気を付けてリビングにいくと、Aがソファで眠っていた。
ほっとして胸を撫で下ろし、起こさないようにしようと思ったのだが、その格好に驚いてヒュッと喉がなってしまった。俺のコートを着ているのだ。かなり大きいようで、毛布のようになってしまっている。
「…赤井、帰ってきていたのか。おかえり」
「あぁ、ただいま」
寝起き特有の呂律の回らない声で話しかけられた。目元を擦るAが、小さくあっと何かに気付いたように声をあげた。
「そうだ、今日肌寒くはなかったか? コートを忘れてい……」
Aは言葉を紡がなかった。
その代わりに耳が赤く染まっていき、頬も徐々に耳と似たようになっていく。
「ち、違う! これは赤井の匂いがしたから、あっ、いや、その……あ」
威勢よく俺に違うと言ったAだったが、墓穴を掘り顔を俯かせて両手で顔を隠した。
「君が悪い」
「え、あぁ、はい…?」
Aを抱き締めると、そっと両手が背中に回された。
ジョディに彼シャツというのをやってみたと自慢し、可愛くて殺されそうだった、あれ以上はないと言ったが、訂正しよう。
「こっちもいい…」
「何をいっているんだ、秀一」
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ユキ(プロフ) - さちさん» コメントありがとうございます。個人的にとーる君は書いていて楽しいので、この話が一段落しても出てくるかもしれません( ̄∇ ̄*) (2019年3月29日 22時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろかったです。続きがすごく気になりました。よろしくお願いします。 (2019年3月29日 22時) (レス) id: 1af3590574 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 奈楠さん» ありがとうございます。学業も忙しくなりますので更新ができない日々もあると思いますが、作品をよろしくお願い致します。コメント嬉しいです(о´∀`о) (2019年3月15日 12時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 受験お疲れ様です!!!作者様のペースで大丈夫ですよ!更新頑張ってください! (2019年3月14日 21時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - 明里香さん» 教えて下さりありがとうございました!修正しました。閲覧ありがとうございます。 (2018年8月3日 7時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユキ x他1人 | 作成日時:2018年5月20日 18時