検索窓
今日:16 hit、昨日:3 hit、合計:48,748 hit

59 ページ14

「彼女自身は何て言ってるの? 変装のわけは何て説明してるの」
「…以前、聞いたんだ。変声機までつけて変装している理由を聞かないのか、と」

責め立てるようなジョディの声に、赤井は指を組んで姿勢を前のめりにして膝に肘をついた。

「彼女いわく、【聞けば答えてくれるだろうが、赤井自身の問題に安易にかかわるべきではない】、と。そして【きっと人生を左右するような大きなものだから、無理に話させたくない】、【だから待つ。いつか話せるようになるまで話す必要はない】…と」

ジョディは驚いたように目を見開き、暫く呆気にとられて黙っていた。

「俺は、彼女に甘えて何も話さないでいる。そう易々と話せる内容ではないし、不安にさせたくはない。…ジョディ?」

名前を呼ばれ、ジョディははっと我に帰った。
どうしようもない嬉しさが胸の中を埋めていく。
嗚呼、彼を理解してくれる人がいた。

「彼女、シュウを本当の意味で大事にしてるのね」

赤井秀一という人物は、完璧だった。
それゆえに女性からの人気は凄いという言葉を乗り越えてくるようなものであったし、男性からも尊敬される人物で、逆に言えば気を抜くところはあまり見ない。

しかし、それはデメリットも当然ある。
上部だけを好きになる輩が多かったのだ。
ジョディもかつて赤井と交際していたが、その時の女性陣からの恨めしそうな視線は忘れないし、その女性陣の大抵の理由が極端に言えば[自慢できるから彼氏に欲しい]といったもので、赤井秀一自身を愛したいというものではなかったように思う。

彼に安らぐ時間はあるのか。
交際をしていた期間、彼にとって自分が安息の地と思うことはなかった。互いに多忙だったこともあるだろうが。

「安心したわ、シュウを受け入れてくれる女性がいたこと。貴方、彼女のとなりは居心地がいいみたいだから」
「……すまない、ジョディ」
「何で謝るのよ。私は良かったと思ってるの。きっとAがいなかったら、本当に気を抜ける場所はシュウにはなかったもの」

ジョディは赤井の背中をバシッと叩いた。
突然のことに驚き、赤井がジョディの方を向くと、彼女は挑発的な顔をしていた。

「いつまでも待たせちゃ悪いわよ」
「分かってるさ」

美味しそうな匂いが二人がいる部屋まで流れてきて、思わず二人して笑った。

「赤井、ジョディさん」
「できたー!」

運ばれてきたのはハンバーグで、徹は今までないほどに嬉しそうな子供らしい笑顔を浮かべていた。

60→←58



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (102 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
624人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ユキ(プロフ) - さちさん» コメントありがとうございます。個人的にとーる君は書いていて楽しいので、この話が一段落しても出てくるかもしれません( ̄∇ ̄*) (2019年3月29日 22時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろかったです。続きがすごく気になりました。よろしくお願いします。 (2019年3月29日 22時) (レス) id: 1af3590574 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 奈楠さん» ありがとうございます。学業も忙しくなりますので更新ができない日々もあると思いますが、作品をよろしくお願い致します。コメント嬉しいです(о´∀`о) (2019年3月15日 12時) (レス) id: 370884fb03 (このIDを非表示/違反報告)
奈楠(プロフ) - 受験お疲れ様です!!!作者様のペースで大丈夫ですよ!更新頑張ってください! (2019年3月14日 21時) (レス) id: f44adf4250 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - 明里香さん» 教えて下さりありがとうございました!修正しました。閲覧ありがとうございます。 (2018年8月3日 7時) (レス) id: 5d51fce380 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ユキ x他1人 | 作成日時:2018年5月20日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。