story24*溶かす一言 ページ28
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寮に着いたのは、午前10時頃。
事務所と社員寮がかなり近いのに少し遅くなってしまった理由は、今日の夕食の買い物を済ませてしまったからだ。
「太宰さ〜ん…いますかぁ…?」
居なかったら恥ずかしいので、控えめに声を掛ける。が、言葉はなくとも存在はすぐに確認できた。
それは、家の奥から洗濯機を操作する電子音が聞こえてきたから。
「太宰さん?」
「あ、お帰り。A」
私が帰ってきたことに気付き、心底優しい微笑みを向けてきた太宰さん。
そのあまりに魅力的な笑顔に、思わず言葉を忘れて魅入ってしまう。
「A… どうかしたのかい?」
「あ、いや!大丈夫で、す……!?」
首を傾げる太宰さんの手元を見て、私は軽く絶句する。
そこにあったのは、私の服だった。
「だ、太宰さん!私の服まで洗うなんてお手間を負わなくても良かったのに!!」
「え?」
何を云っているのか理解していない様子の太宰さんに対し、私の頭の中は申し訳なさでいっぱいだ。
前に太宰さんに『変な遠慮はいらない』と云ってもらえたけど、それで割り切れる性格ではない。
元々、変な遠慮をしない事と自分の手間を掛けさせることは別問題だ。
おろおろする私を見て、やっと何に懸念を抱いているのかが分かった太宰さんは、クスリと笑ってから私の方へ近づいてきた。
「もう干すだけだから一緒にやろっか。それで…」
髪をするりと撫で、そして整った顔を私の耳元に近付ける。
ビクリと震えた私を面白がっているのか、小さな笑い声がダイレクトに耳に届く。
心臓の音がどんどん大きくなっていく中、太宰さんはたった一言、言葉を発した。
「それで終わったら、私とデートしようか」
脳みそがグラリと揺れ、危うく意識がシャットアウトしそうになった。
朝の一件を思い出し、思わず顔が赤くなる。
_______恋は、滞りなく進まない。
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早瀬『黒瀬のんさん、リクエストありがとう!』
作者『遅くなりまくってすみません。』
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鈴蘭(プロフ) - ウナさん» 私も書いててひえええってなってます笑(?) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - みそしる大臣さん» そんなドキドキをお届けできているなんて嬉しい限りです(^^) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - SAKA0829093さん» ありがとうございます!ダラダラ更新で本当すみません… (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
ウナ - もうヤバイですマジでもうヤバイですよ!!!!ひええええってなります(?) (2019年4月3日 19時) (レス) id: 0bc8f10023 (このIDを非表示/違反報告)
みそしる大臣 - 夢主より僕の方が早くキュン死にしそうだ…心臓が持たない! (2019年3月30日 23時) (レス) id: 487407bef1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴蘭 | 作成日時:2018年5月25日 1時