09 side:your ページ9
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私は夜の空気が好きだ。
静かになった住宅街、柔らかい街灯の明かり。
大きく息を吸い込んだら微かに秋の匂い。
「…」
住んでいるアパートの近くにある橋。
これだけは、いつになっても好きになれない。
「あ、猫」
暗がりの中、きらりとなにかが光ってよく目を凝らしてみるとダンボールに入れられた真っ黒な子猫。
助けなきゃ。
私の目にはもう子猫しか映っていない。
橋に手をかけてよじ登った時だった。
視界が大きく揺れて後ろへ傾く。
「…あぶねぇ」
息を切らした男の子が私の腕を掴んでいる。
当たり前だけどあたたかい体温。
彼は心配そうに眉をひそめている。
変な勘違いをさせてしまったかもしれない。
「ねえ」
「…!なに、」
「あの子」
子猫が入ったダンボールを指さすと私と同じように目を凝らして、見つけてくれた。
「このままじゃ、川で流されちゃうかも」
「…こっち来い。走るぞ」
彼が私の手を掴んで走り出す。
久しぶりに誰かの体温にしっかりと触れたかもなんてぼんやりと考えた。
「見張ってて」
頷くと立入禁止と赤い文字で書かれた看板を無視して柵を飛び越える。
勢いよく階段を降り、ダンボールごと子猫を抱えて持ってきてくれた。
「ん、ほら」
ダンボールの中の子猫は青と黄色の綺麗な瞳で私を不思議そうに見つめている。
捨てられてからさほど時間が経過していないのか艶のある毛並みで元気そうだった。
「ありがとう」
「いや、別に…」
彼にお礼を告げて家まで走る。
動物に詳しい人に電話をかけて事情を話したら必要なものを教えてくれた。
子猫を私の部屋に置いて自転車に跨り24時間営業の大型スーパーへ。
店員さんにペット用品のコーナーを教えてもらって必要最低限のものを買い揃えた。
家の中に入った瞬間、いつの間にか帰ってきていたあの人におかえりなさいと言われたけれど今はそれどころじゃない。
急いで部屋に行くとダンボールの中からひょっこりと顔を出してきてホッとした。
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涼-suzu-(プロフ) - 白昼夢さん» はじめまして。コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです。こちらこそこれからも涼さんの作品を愛してあげてくださいませ( ˶'ᵕ'˶ ) (2023年3月31日 15時) (レス) id: 6a2e5ac073 (このIDを非表示/違反報告)
白昼夢(プロフ) - 初めまして!新作待ってました( ; ; )ずっと陰ながら応援させていただいて、、凉さんの作品全部読み漁るほど大好きなんです(´༎ຶོρ༎ຶོ`これからも素晴らしい作品お待ちしてます!頑張ってください!!! (2023年3月31日 0時) (レス) id: 40e11ba78b (このIDを非表示/違反報告)
涼-suzu-(プロフ) - 茉子さん» 泣かせてしまってごめんなさい(´;ω;`)いつも私の作品を読んでくださってありがとうございます。私も大好きです! (2023年3月28日 23時) (レス) id: 6a2e5ac073 (このIDを非表示/違反報告)
涼-suzu-(プロフ) - シラユキ。さん» ツンデレとツンデレのコラボ(?)です!幸せにするんで一生ついてきてください(もはやプロポーズ) (2023年3月28日 23時) (レス) id: 6a2e5ac073 (このIDを非表示/違反報告)
茉子(プロフ) - 泣いたんですが😭子どもへの気持ち分かるだけに…続きも楽しみです。涼さんの作品全部読んでます☆大好きです😊 (2023年3月28日 18時) (レス) @page24 id: 0c861b61c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:涼-suzu- | 作成日時:2023年3月26日 15時