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「お支払いありがとうございました」
「ちゃんと領収書貰ったし、社長に請求するから気にしないで」
「多めにもらっといてくださいね」
「お、いい考えだね。金額書き変えとこうかな」
佐久間さんに家の前で降ろしてもらってもう一度お礼を言う。
そのまま少し散歩をしようと子猫をケージに入れたまま歩いた。
「ほら、もみじだよ」
ひらりと落ちてきた真っ赤なもみじをケージ越しに子猫に見せる。
「わかるわけないよね」
キョトンとした子猫にもみじを地に落とした。
「あれ、昨日の人」
しばらく歩くと登り坂の前にしゃがみ込んだ男の子。
自転車のチェーンがだらしなく垂れている。
「大丈夫?」
彼からの返答はない。
近づいてみると小さな声でなにかをずっと呟いている。
「今からこの坂を登るのか?壊れたチャリ押して?いやいや冗談じゃない。あぁ登りたくないでも帰りたい…」
「ねえ」
「よし、帰るか」
彼がいきなり立ち上がって目が合った。
「だぁ!?」
「っ!?」
「びっくりした…って、昨日の」
「…ども」
向こうも私を覚えていたらしい。
「それ、壊れたの?」
「え、?」
「自転車」
「あぁ、チェーン外れてさ。俺こういうの直せないから友達に頼みに行こうと思って」
「…来て」
私のいつもの散歩コース、坂道の隣にある緩やかな道を歩けば壊れた自転車を押しながら彼がついてくる。
休みの日にここに顔を出す日が来るなんて。
私がバイトをしている整備工場。
彼に子猫を預けて事務所内へ入った。
ロッカールームで作業着の青いつなぎを着て髪を適当に束ねる。
そしてそのへんにあった軍手をはめて彼の元へ。
ただ自転車のチェーンを直すだけだけど、少しでも作業をするならなんとなくこの格好でいたくて。
「自転車、かりる」
「あ、うん」
私が初めて自転車に乗ったのは小学生の頃。
あの人が誰かから譲ってもらったかわいくもかっこよくもないごく普通の自転車。
しかも小学生の私には少し大きくて漕ぎにくい。
補助輪はないからあの人が代わりに支えてくれていた。
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涼-suzu-(プロフ) - 白昼夢さん» はじめまして。コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです。こちらこそこれからも涼さんの作品を愛してあげてくださいませ( ˶'ᵕ'˶ ) (2023年3月31日 15時) (レス) id: 6a2e5ac073 (このIDを非表示/違反報告)
白昼夢(プロフ) - 初めまして!新作待ってました( ; ; )ずっと陰ながら応援させていただいて、、凉さんの作品全部読み漁るほど大好きなんです(´༎ຶོρ༎ຶོ`これからも素晴らしい作品お待ちしてます!頑張ってください!!! (2023年3月31日 0時) (レス) id: 40e11ba78b (このIDを非表示/違反報告)
涼-suzu-(プロフ) - 茉子さん» 泣かせてしまってごめんなさい(´;ω;`)いつも私の作品を読んでくださってありがとうございます。私も大好きです! (2023年3月28日 23時) (レス) id: 6a2e5ac073 (このIDを非表示/違反報告)
涼-suzu-(プロフ) - シラユキ。さん» ツンデレとツンデレのコラボ(?)です!幸せにするんで一生ついてきてください(もはやプロポーズ) (2023年3月28日 23時) (レス) id: 6a2e5ac073 (このIDを非表示/違反報告)
茉子(プロフ) - 泣いたんですが😭子どもへの気持ち分かるだけに…続きも楽しみです。涼さんの作品全部読んでます☆大好きです😊 (2023年3月28日 18時) (レス) @page24 id: 0c861b61c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:涼-suzu- | 作成日時:2023年3月26日 15時