戻れないから

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次の休み、こっそり翔太の職場に行こうと企んで家を出た。

そういえば隣で涼太がお店やってるって言ってたな。


「先にそっち行くか」


お昼近くに涼太が経営しているパン屋へ足を運ぶ。


「あ、『ベーカリー セ・ボン』…ここだ」


自動ドアが開いて一気に焼けたパンのいい香りに包まれて大きく息を吸う。

そこへちょうどバックヤードから出てきた涼太と目が合った。


「おー、いらっしゃい」

「やっほー。立派なお店だね」

「でしょ?」

「パンも美味しそうなのばっかり」

「2階にカフェあるから、そこで食べてく?」

「え、食べる!」

「美味しいコーヒー作ってくれるうるさい関西人がいるからよかったら相手してあげて」

「ふふ、褒めてるの?貶してるの?」

「褒めてます」

「あはは!そっか」

「…翔太とは、あれからどうなったの?」

「翔太からなにも聞いてないの?」

「聞いたらなんもねぇって言うけど嬉しそうな顔はしてるから、いい方向には向かったんだろうなって思ってる」

「まあ…そんな感じ」

「よかったね。2人お似合いだし」

「涼太たちには負けるかな」

「当たり前でしょ」

「謙遜しろ謙遜を」

「謙遜してこれだから」

「…さすがじゃん」

「この後翔太のとこ行く?」

「うん。翔太には言ってないから、こっそり行って驚かそうと思ってさ」

「じゃあ差し入れにパン持ってってあげてくれる?準備しとくから」

「いいよ。優しい幼馴染みだね」

「俺と翔太は運命共同体だからね」

「…なるほど」


幼稚園から一緒だし、なんなら生まれた病院も一緒だって前に翔太がドヤってたから本当に運命共同体と言っても過言ではない。


「あ、引き止めてごめんね。ゆっくりしてって」

「うん。ありがとう」

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