Street Blues (ページ7)

今日:33 hit、昨日:14 hit、合計:453,941 hit

７ページ7

昔よく弾いてた一番好きな曲。

大学生の頃は毎週末、
大倉のお父さんが経営してるこの店で、
演奏させてもらってた。

学生の頃に作った曲やけど・・・

今の気持ちに即興で歌詞は変えて。

店の奥のステージ。

クリスマスツリーの脇に直に座って、
ギター片手に歌い始めた俺を、

Aは涙ぐんだまんま、
見つめてる。

やっぱりその目には俺やなくて、
櫻井リーダーが映ってんのかな。

俺を好きにさせたい。

俺だけを。

他の男なんて、その心から追い出して。

俺だけで埋め尽くして。

気付いたら、
Aへの気持ちを歌ってた。

曲の終わり。

Aが、カウンターのスツールから立ち上がって、
俺のとこまで歩いて来る。

しばらく、涙目で座ってる俺を見降ろしてた。

「なんで失恋したのに、
こんな可愛い恋の歌、歌うん？
章大のあほ」

泣きながら、言うAが愛しいて。

思わず、立ち上がって、抱きしめてた。

振りほどかれると思ったのに。

Aが俺の腕の中で、
ぽろぽろ泣き出して・・・

他の男を思って泣いてんのに。

それでも嬉しいて、
胸が沸騰しそうやった。

終電逃して、勢いで入ったいかがわしいホテル。

下心ないて言うたら、嘘になるけど。

Aにそんなつもりないんは、
分かってるから。

「章大、すごいね。
こんなとこ初めて来たわ。
クリスマス仕様になってて可愛い。
すごいすごい」

部屋中、はしゃいで回って。

なんなら、ちょっとした社会見学になってる。

「章大は来たことあるん？」

急に振り返って聞かれて、ドキッてした。

ないて言うた方がええ？

いや、正直に言うた方がええ？

分かれへん。

迷ったままで黙ってたら。

「やらし。
なんか思い出してる」

ぷいってされた。

それがめっちゃ可愛いて。

もうやばい。

けど、失恋して弱ってるとこ、
つけ込んでるみたいやから。

今日だけは絶対になんも出来ひんやんか。