Street Blues (ページ5)

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通りの向こうに、
昔、ギター弾いてたバーが見えてる。

大学時代の友達の大倉がオーナーで、
バーテンしてる。

大倉、かっこええからさ、
会わせたくなかってんけど。

Aがよく、
憧れやけど入る勇気ないて言うてるような、
おしゃれな店や。

雨も少し強くなってきた。

傘、持ってないし、
あっこでお酒でも飲んで、休んでく？

ルミナリエなんて先の話やなくて。

今、もう誘ってまおかな。

けど俺より先に。

「章大。
櫻井リーダー、
ルミナリエに誘ってみたら、
来てくれるかな？」

Aに相談されてもうた。

忘れるとこやった。

俺とこんなに毎日のように一緒におってくれるんも、全部、櫻井リーダーへの片想いを相談するため。

「ああ、うん・・・」

曖昧にうなづいた時。

バーの入ったビルから、
当の櫻井リーダーと、
受付の美雪ちゃんが出て来るんが、目に入った。

美雪ちゃんが、
櫻井リーダーの腕に甘えてつかまってる。

どう見ても恋人同士の雰囲気や。

こんなとこ見せたない。

「A、はよ行こうや」

思わず、手を掴みかけたけど、
遅かった。

俺よりももっと先に、
Aは櫻井リーダーに気付いてた。

雨に少し濡れた髪と頬。

傷付いた目で、
他の女の子と一緒の櫻井リーダーを見つめたまま、
立ち尽くしてる。

「美雪ちゃん、
タクシー拾う？
酔っちゃった？
帰れるかな」

櫻井リーダーの綺麗な標準語が、
夜の闇の中でやけにはっきり聞こえた。

Aの手が震えてる。

泣かせたくない。

傷付いた心、
少しでも軽くしてやりたい。

「A、ちょっと寄り道してこ？」

気付いたら手をとって、
狭い階段駆け上がって。

バーのドアを開けてた。