8話『狐と優しい雨』(中) ページ27
扉を閉めた後、レイは急に緊張し始めた。何を話せばいいのか、どこから回ればいいのか、話し相手だったミカやリトもいない。ただ昨日会ったばかりのコハク1人しかいないのだ。
汗を握りしめたレイはコハクに話しかけた。
レイ「俺で大丈夫だったか?」
…なんでネガティブなこと言ってんだよ!気を不味くさせるだろ!とレイは頭の中で慌てふためく。
コハク「いえ…大丈夫ですよ…?」
レイ「そうか」
二人の間に静寂が訪れた。ミカのようなずっと話しているようなイカなら簡単なことだったが、今回はそうもいかない。
レイ「服とか…興味あるか…?」
コハク「…まあ…少しは…」
レイ「あ、じゃあ次出かける時は服を買いに行こう…!」
コハク「え…いいんですか…?」
レイ「いいよ、全然。全くもって忙しいってわけじゃないし…」
コハク「…そうなんですか」
コハクとレイの会話が異様に続かない。レイが必死に話題を探している最中に、コハクが口を開いた。
コハク「私…男子と話すのが苦手で…でも嫌いってわけじゃないんです。」
レイ「そうなのか?」
コハク「はい…だから遠慮なく話しかけて大丈夫ですよ…?その方が私も嬉しいです」
レイ「なんか、気を遣わせたみたいだな。悪い」
コハク「いえ、大丈夫です」
コハクも落ち着いてきたのか、だんだん言葉の間がなくなってきた。
レイもコハクの一言で肩の力が抜けた。
レイはコハクにどこにお店があるのか、ここは何を売っているのか、おすすめの店だとかたくさん教えた。コハクも真剣にレイの言葉に耳を傾けていた。
二人の間に会話も増え、笑顔も見え始めた。
ふと、レイはコハクに気になっていることを聞いた。
レイ「なあ、ここにいる理由って親が関係してるのか?」
コハクは再び黙って下を向いた。
レイ「俺だけなら言えることは、ないか?」
レイはコハクの顔色をうかがった。
コハク「実は…私の親が厳しくてここで流行ってるバトルが出来なかったんです。私も、戦って勝った時の喜びや、チーム内での友情を深めるのとか、知ってみたかったんです。最初から母に反対されて、「そんな物騒なことするものじゃありません」とか言われてついカッとなって喧嘩になっちゃったんです」
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作者名:こっこ@amuse | 作成日時:2019年6月17日 7時