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紫陽花 3 ページ3

俺には、一つ下の妹がいた。
名前はA。
器量もよく、心優しい妹は俺によく懐いており、俺も妹をとても可愛がった。
俺は実家の剣の稽古と軍に所属し腕を上げつつ、個人的に好きだった農業を行い、Aは俺と同様に護身術として剣を習いながら家を守っていた。
穏やかに過ごす日々に、これからも変わらないんだろうなぁと思っていた。

それが、壊れる前のささやかな幸福なのだと知らないままで。

Aは、かなり珍しい目の色を持っている。
所謂紫陽花色というもので、基本的には淡い青色なのだが、光の具合やA自身の感情などで色が変わるのだ。俺は、その瞳が大好きだった。
だが、その珍しい瞳を狙う者は多いわけで。

あの日、Aは拐われた。
いくら軍に所属しそれなりの腕を持っていても、多勢に無勢。加えて向こうはそれなりの軍の人間で、当時の未熟な俺は大怪我を負い、… Aは俺の目の前で連れ去られた。
今でもあの時のAの声が耳に残っている。

「─いやっ、やだ!兄様...っ、兄様ぁ!!」

…時折夢に出てくると、俺は必ず泣いていた。

Aが拐われ、満身創痍の俺は奴らへの復讐を心に刻んでいた。きっと、これが今の俺が復讐鬼と呼ばれる起源だろう。

その後、俺の祖国は滅ぼされることになる。俺は生き延びたが、復讐対象が増えただけだった。この時に俺はグルッペンに拾われ、祖国を滅ぼした奴らへの復讐と、Aを探し出すことを条件に我々国の一員になった。

いくつもの国と戦争をした。その度にAの影を探したけれど、どこにも見つからなかった。グルッペン達は、「まだ諦めるな」と言っていたが、俺の心はかなり窶れていた。
長年見つかっていないA。情報面に長けている鬱先生やロボロでさえも見つかることがない。もしかしたら…などと最悪の未来を想像してしまうのだ。
それでも、俺は探し続けるしかない。

季節が巡るたび、梅雨の時期に咲く紫陽花の華にAを重ね、

俺は、復讐の炎を滾らせるのだ。
愛する妹の為に。

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すずねこ - 更新頑張ってくださいね❗ (2022年7月11日 20時) (レス) @page48 id: 5c9b7042cd (このIDを非表示/違反報告)
スノウ(プロフ) - 夜さん» 続きは書きたいです…!ですがリアルが忙しくなかなか更新できないのが悔しいです…!コメントありがとうございます!待っていただければ、いつか、いつかは!!書きますのでお待ちください! (2021年4月5日 23時) (レス) id: 8e20d2cd66 (このIDを非表示/違反報告)
- とても面白くて一気読みしてしまいました!まだ続きは書かれる予定ですか?書いてくださるならいくらでも待つので更新頑張ってください! (2021年2月5日 21時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
スノウ(プロフ) - ウルズさん» コメントありがとうございます!パスワードの件はご迷惑おかけしました…(;´Д`)最初の頃から見ていただきとても嬉しいです! (2020年10月13日 23時) (レス) id: fa99c77dd8 (このIDを非表示/違反報告)
ウルズ - またこちらの作品が読めて嬉しい限りです。連載初期から文が素敵だと思い愛読してました。急に検索しても出てこなくなった事に驚きましたが、パスをかけられていたと知り納得しました。詳しい事情は分かりませんが、これからも頑張って下さい。更新楽しみにしています。 (2020年10月13日 22時) (レス) id: 18e5b459af (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:スノウ | 作成日時:2019年10月30日 13時

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