Story 11 ページ12
「すみません！ あの、どうやったらあそこに？」
ハリーの問いにおばさんは親切に答えてくれた。
「九と四分の三番線ね？ 心配ないわよ。うちのロンも今年からホグワーツに入るの。行き方はね、九番線と十番線の間の壁に向かって歩いていくの。怖かったら小走りで行きなさい」
ハリーは言われた通りに壁に向かって走っていく。その背中が見えなくなってからAも後を追った。
壁を抜けた世界はそれまでとは違っていた。
電車の代わりに赤と黒の蒸気機関車が停車しており、機関車の煙が漂うホームの看板には『九と四分の三 ホグワーツ特急』と書かれている。
先頭の二、三両は満席だったので少し歩いてから二人はようやく空いているコンパートメントを見つけ、窓際に座った。
「……夢じゃないよね」汽車が走り出してからポツリとAが呟く。
「うん、信じられないけど……夢じゃない」
汽車は建物の多いロンドンの街並みを後にして、いつのまにか窓の外は山や湖に囲まれていた。
話すことがないのでAはあらかじめ一冊だけトランクから出しておいた本、『闇の力――護身術入門』を読みはじめた。タイトルからして闇の魔術に対する防衛術の教科書だということがわかる。
「A、それ面白い？」
「ええ」
コンパートメントの戸が開いて、赤毛の男の子が顔を出した。確か先程見た四人の兄弟の一番下の子だとAは思い出す。
「ねぇ、そこ、座っていい？ 他に空いてなくて」
「いいよ」ハリーが返す。
「僕、ロンって言うんだ。ロン・ウィーズリー」
ハリーの隣に座ると男の子が自己紹介した。
「僕ハリー。ハリー・ポッター」
「あ、私はA・ポッター。えっと、よ、よろしく……」
二人が有名な兄妹だと知るとロンは興奮し、更にハリーの額の傷を見て「すげぇ……」と声をもらした。
そこからあっという間に打ち解けた二人はいろいろと会話を弾ませ、あまり人と喋るのが得意ではないAはほとんど聞き役にまわっていたがふと百味ビーンズの箱を漁っている茶色のクマネズミが目に入って笑う。
「その子可愛いわね」
「え？ あー、この子はスキャバーズ。でもちょっとカッコ悪いだろ？」
「ちょっぴりね」とハリー。
ロンは兄から教えてもらった呪文をやってみると言ったが、杖を振り上げた時またコンパートメントの戸が開いてホグワーツ・ローブを着た女の子が現れた。
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作者名：闍弥嵩 李 | 作成日時：2020年1月2日 17時
