第六話 万人彩色 ページ31
暮れ時の緋色に輝く水路を、人懐っこいブルがスイスイと走る。空が暮れるにつれてウォーターセブンは昼間の賑わいから夜の喧騒へと変わり、港町近辺には電飾が煌めき始めていた。
その煌めきの下。
流れの緩やかな大水路には、山盛り沢山の品を積み込んだ小舟の並ぶ水上市場が開かれ、多くの観光客が行き交っている。高くにある島のシンボル〈大理石製の噴水塔〉は夕陽を照り返して赤く染まっており、しかし数分後には迫り来る宵の口に沈むだろう。
ハインは噴水塔の近くに架かる橋の影で、それらの様子を眺めていた。
(…条約緩和は今年も望めなさそうですね。)
いつの事だったろうか。
世界政府は、市長から提出された『ウォーターセブンからの要請なしに行動しない』との、あからさまな厄介払いもとい要望を快諾した。これは現在も効力を有し、政府機関である海軍や司法にも適応されている。政府は長年の関係性を改善しようと思い立ち、歩み寄りの姿勢を見せたつもりなのかもしれないが…現在を見るに効果は今ひとつだ。
「やぁ。」
「こんばんは。」
どこからともなく現れた気軽な男、革命軍のサボは人当たりの良い笑顔を浮かべたまま、眼下に広がる水の都の夜景を見回す。
「シャボンディ諸島は如何でしたか?」
「苦労させてもらったよ、まったく…けれど僕らは間違っちゃいない。」
革命軍にとって、シャボンディ諸島は良い島だ。船が隠せる程の隙間を作ってくれるマングローブと、途切れることのない人や船の往来は、彼らを寛容に受け入れる。広大な無法地帯で頻発する騒動は生活跡を隠し、海軍の目は行き届かない。そのせいなのか、今朝の新聞には当たり障りのない記事ばかりが書かれ、ヒューマンショップ襲撃事件には触れてすらいなかった。
辛うじて確認できたのは『革命軍の暴力的活動』と『シャボンディ諸島の商人達に迫る危機』と言う小見出しに、たった十数行の文章だけだ。
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poidf(ポイドフ)(プロフ) - 誤字も見付けたら教えてくださいまし (11月18日 18時) (レス) id: 24e80c86dc (このIDを非表示/違反報告)
poidf(ポイドフ)(プロフ) - どこかにルビ振る為の■が混ざってるかもしれません。混ざってないかもしれない。忘れましてよ。見つけたら教えて。 (2023年3月7日 22時) (レス) id: 24e80c86dc (このIDを非表示/違反報告)
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