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第五話 アダンダラのマリア ページ30

マリアはもともと大山猫の能力者だった。
だが本人いわく、年月により化けてアダンダラとなったらしい。彼女は猫特有の身のこなしに、暗闇に強い双眼と鋭い聴覚、多少の壁などよじ登る爪等々、潜入や隠密行動に長けた能力を持ち、今は敵地に踏み込める参謀将校として重宝されている。現場をいち早く知ると言う点では情報局以上の能力を有し、混戦状態では大きな力になってくれるのだ。

「環境への対応訓練はこの前したんだけど、人質が問題だったかな。」
「ですね。」

遅れて森を抜けて来たハインは、青空に伸びるような灯台を見上げる。ゴロゴロと喉を鳴らすアダンダラは軽やかな動きで海賊船に飛び乗った。彼女は基本的に猫の姿でいることが多く、人の姿はどうにも落ち着かないと言う。人前に出る場合は仕方なしに人型となるが、それ以外はこのように自由気ままな猫でいた。

「海賊船どうしようか。乗って帰るにしてもウォーターセブンに支部はないからなぁ。乗り捨てはダメでしょ?島民に譲る?」
「そうですね。」
「お掃除だけしないとだねぇ。」

お掃除〜とマリアが動けば灯台の片付けを終えた部下達が集まり、船内を覗くなり書籍やら樽、その他様々な物をポイポイと甲板に出し始める。ハインも船中を見て回り、白紙の多い航海日誌と几帳面な文体の日記数冊、面白そうな小説一冊を貰うと、潮風の心地よい船縁に腰を下ろした。冷蔵庫を漁って来たのだろうアダンダラは干物をモチャモチャ食べながら、ひんやりと冷たい床に寝そべって部下達を眺める。

「ヒューマンショップ襲撃の件は聞いた?主犯は革命軍って言ってたけど、一応行ってみる?」
「行ったところで逃げてますよ。接触してくるような中核の構成員が残ってるとも思えません。朝刊を確認して…それだけで済みそうです。」
「だよねぇ。逃げ遅れた下っ端を数人捕まえた所で無知の偽善者ばっかりだし…じゃ、ホテルでのんびり過ごそっか!」

しゅっこーう、とアダンダラが間延びして言えば、部下がゆっくりと海賊船を動かし始める。後方には借りた連絡船も続き、いつの間にやらお土産のレモンが一山作られていた。『そんなに買ってどうするのさ?』とアダンダラは笑い、食い意地の張った部下は『コック連中に美味いもん作ってもらうんっすよ!』と楽しそうである。そう大きくもない船は浅い海を滑るように進み、何事もなかったかのように灯台を去っていった。

第六話 万人彩色→←第五話 アダンダラのマリア



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poidf(ポイドフ)(プロフ) - 誤字も見付けたら教えてくださいまし (11月18日 18時) (レス) id: 24e80c86dc (このIDを非表示/違反報告)
poidf(ポイドフ)(プロフ) - どこかにルビ振る為の■が混ざってるかもしれません。混ざってないかもしれない。忘れましてよ。見つけたら教えて。 (2023年3月7日 22時) (レス) id: 24e80c86dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:poidf | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年7月4日 15時

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