第五話 アダンダラのマリア ページ28
二人は朝食を食べ終えると、食後のタルトと紅茶をつまみ、あれやこれやと楽しそうに話しながら会計を済ませて店を出る。
道端で遊んでいる子供達にヒラヒラと手を振るマリアは、民家の隙間を縫うような細い階段を上り始めた。展望台に続いているらしい階段を上って行けば、風に乗って西側の騒ぎが聞こえてくる。そのうち階段は下り坂となり、二人は見晴らしの良い展望台を通り過ぎた。そのまま原生林の遊歩道を歩いて行くと、天然の湾を見渡せる高台に出る。
潮風が山の斜面を駆け上がり、揺れる木々の合間で鳥が鳴く。木漏れ日に白髪を煌めかせるマリアは眼下に見える湾と海賊に、ふぅん…と呟いて腕を組んだ。
「あれ何の能力だろう。」
「わんちゃん。」
「の、ハウンド系？なら素早さ上々かな。」
湾を私物化した海賊達は、海兵達を押し退けようと暴れている。しかし強化プレートで作られた海軍の盾には浅い傷がつくだけで、剣も銃も威力不足が否めない。理不尽を前にギャンギャンと喚く下っ端を置いて、海賊の能力者もとい船長は足場の悪そうな岩場にある灯台を奪ったまま、出てくる様子もなく戦闘を見つめている。
船長の半獣姿を見たマリアは動物系の中でも犬の一種、ハウンドドッグ系だと睨んだようだ。足が速いことで知られる猟犬だが、走りに特化したせいで体が細く、四肢は一般的な犬よりも折れやすい。このハウンドドッグの利点や欠点は、そっくりそのまま能力者にも引き継がれる。
と、するならば、接近戦に持ち込めば勝てる相手だ。
「あの船長、能力を過信していないと言うより、慎重に生き抜いて来たって感じかな？悪くないね。」
「接近戦を避けてるあたり、弱点も自覚していそうですね。」
「だねぇ。海賊にしては頑張ってるぅ。」
船長の立ち位置は悪くなかった。
滑りやすい岩場の灯台は、動物系能力者に有利な地形だ。海兵達は足元に注意を払わなければならず、逆に船長はハウンドドッグ由来の運動神経で動き回ることができる。身軽なハウンドドッグは足場の心許ない海兵達を翻弄し、同時に灯台の上にいる海賊が狙撃を仕掛ければ、盾兵は姿勢を崩されて撃たれ、陣形は崩れ去るはずだ。
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poidf(ポイドフ)(プロフ) - 誤字も見付けたら教えてくださいまし (11月18日 18時) (
レス) id: 24e80c86dc (このIDを非表示/違反報告)
poidf(ポイドフ)(プロフ) - どこかにルビ振る為の■が混ざってるかもしれません。混ざってないかもしれない。忘れましてよ。見つけたら教えて。 (2023年3月7日 22時) (レス) id: 24e80c86dc (このIDを非表示/違反報告)
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