2-32 ページ32
「ドラコ」
ドラコは自分の名前が可愛らしい声で呼ばれるのを聞いた瞬間、周りの人が驚くぐらいの笑顔になった。
こっちよ、と柱の陰から手を招くAを見つけると、あたりをきょろきょろと見回して無人であることを確認し、彼女の元へと駆け寄る。
「メリークリスマス」
Aが手に持っていた小包を渡すと、ドラコは「開けても良いか？」と開けながら尋ねた。Aはその様子に笑いながら頷く。
中身は、シンプルで細長いボトルだった。中で液体がさらさらと揺れる。
よく見ればボトルはスプレー用で、ラベルには【Body Spray】と表記されていた。
「貴方はなんでも持ってるから、何が良いのか分からなかったのだけれど…ほら、クィディッチ選手に選ばれたんだから、使うかなって。これなら消耗品だし、いくつあっても良いでしょう?」
Aは控えめに笑う。まるで、ドラコの顔色を伺っているようだった。
「嬉しいよ。ありがとう」
ドラコはそう言って微笑み、Aの頭を撫でた。
すると、彼女は幸せそうに笑う。長女である彼女は、頭を撫でることは多かったが、撫でられることは少なかったからだ。
同級生相手に照れ臭くて言えないが、Aは兄に撫でてもらうのが好きだった。
事実、ドラコの口から出た言葉は本心からだった。
マルフォイ家のお坊ちゃんだから、と贈られてきた高価な物よりも、ドラコを想って選んでくれたAからのプレゼントの方が、何倍も嬉しい。
彼の左手首では、シルバーのブレスレットが輝いていた。
「…じゃあ、私、そろそろ戻るわね」
「ああ、ありがとう」
Aはドラコに手を振ると、柱の陰から出て行った。
…否、出て行こうとした。
「A」
ドラコはAの腕を掴み、彼女を引き留めた。
何故そうしたのか、ドラコには自分でも分からなかったが、彼女が行くのを止めなければならないと彼の勘が言っていたのだ。
「なあに？」
Aはドラコに名前を呼ばれると、いつも嬉しそうな顔をする。
今回も、にこにこと振り向いた。
「…頼むから、無茶しないでくれよ」
「？ 大丈夫よ、私はマグル生まれじゃないもの」
僕が言いたいのは、そういうことじゃないんだけど。
ドラコはため息をつきそうになったが、「…そうか」とだけ返し、Aの腕を離した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 932人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あんず(プロフ) - 髪の毛つくほど近づいたんかと思ったら発狂もんでした。素晴らしい作品をありがとう神よ。髪飾り、ヘアオイルとかマルフォイがプレゼントしてくれたらうれしいですね…(白目) (2021年4月19日 22時) (
レス) id: 6e2fd367e1 (このIDを非表示/違反報告)
わらび - 本当にハリーポッターの世界にいるような気分になれて、読んでいてドキドキが止まらないです…！！私はいつまでも待っているので、作者様のペースでお話を進めてください！楽しみにしています♪ (2021年4月4日 23時) (レス) id: 1ed07fed42 (このIDを非表示/違反報告)
Kitty(プロフ) - 設定や主人公の価値観が好きです。面白いです！続きも楽しみです！ (2021年3月25日 20時) (レス) id: 9cd6021468 (このIDを非表示/違反報告)
ycamelliayhighf(プロフ) - すごく面白かったです！！続きを楽しみにしています！！ (2021年1月16日 18時) (レス) id: f576afea94 (このIDを非表示/違反報告)
ひなげし(プロフ) - 久しぶりに夢小説が読みたくなり占ツクに戻ってきて最初に読んだ作品でした。とても心理描写が繊細で読んでいてとても胸がときめきました。更新頑張ってください、応援しています。長文でのコメント失礼いたしました。 (2020年12月17日 23時) (レス) id: 99c881a30b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：深海
| 作成日時：2020年11月21日 18時
