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 その片手が背中からそっと外されたと思うと、ミヒャエルがまだ長い煙草の火を灰皿でにじり消したのが見える。そして再び澪を抱きしめると、今度は離すまいとするように澪の髪へ鼻先を寄せた。

「お疲れさマ、澪」
「……うん。……でもミヒャ、ライブとか来るんだったら変装くらいはしてくれなきゃダメだよ?」
「アハハ。だって俺目立つしさア。あト、……匂わセ?」
「別に、いいけどさ。……っ⁉」

 途端、痛い位の力ので方をがしりと摑まれ、押し飛ばすように距離を開けられる。少しよろけながらミヒャエルと目が合った。許しを乞うような、目元の霞むようなはかない笑い方。

「俺さあフジュンだかラ、……純粋な子見ると攻撃したくなんノ。どれだけ好きでモ」

 一瞬、思考が止まった。頬が離れてから、唇を押し当てられたのだと理解する。

「え、」
「……抵抗しないってことでいイ?」

 二、三秒あって、もう一度口を塞がれる。首筋を、腰を抑えつける手がひどく熱い。ぬるりと入り込む舌とピアスの固い感触。カチ、と歯に当たる音。

「っ、ミヒャ、……」

 慣れない行為に対する怯えと驚きと、脳がぼんやりと溶けていくような快さ。力が抜けてへたりこみそうになるが、澪の体をしっかりと支えた腕がそれを許さない。ふとミヒャエルの右手が、澪の髪を撫でるように滑った。


 ……ミヒャエルが思い出したように離れるまで、どの位の間そうしていたのか分からない。気付くと澪は、荒い息のままフェンスにもたれかかっていた。さも人畜無害そうに眉を八の字にして、ミヒャエルが顔を覗きこんで来る。

「ごめン、怒っタ、よネ? ごめン。……Es tut mir leid……,」

 本気の謝罪だと理解していても、それにどう返せばいいのか、澪には分からない。しかし文句を言う気にもなれなくて、ミヒャエルの固い腹を小突く。

「いいよ、別に。……ミヒャエル、僕のこと、……好き、なんでしょ?」

 顔を背けながらそう言ったのに、ミヒャエルがどんな表情をしたのか、澪にはハッキリと分かるようだった。

「……うン。好キ、好き好き好キ」

 言いながら、ミヒャエルが澪の右手を優しく取る。そして、

「Ich liebe dich, Mein Herr.」

 先程までとは打って変わって、ガラス細工が壊れるのを恐れるように、そっとその手へ口付けした。

  (6/25記)→←Küsse dich 6/24記



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和癒 - ここりどらすさん» 遅くなってしまい、申し訳ないです!!更新いたしました!本当に申し訳ございませんでした! (2022年9月20日 13時) (レス) id: c16c5fa71a (このIDを非表示/違反報告)
ここりどらす(プロフ) - アルフさん» ワ、ありがとうございます! 和癒さんの澪くんは【https://uranai.nosv.org/u.php/novel/2nayu2/】、うちのミヒャエルは【https://uranai.nosv.org/u.php/novel/kokoridora6/】にCSがあります…! (2022年8月3日 7時) (レス) id: 29de6c45fc (このIDを非表示/違反報告)
ここりどらす(プロフ) - 和癒さん» 全然!! 私も最近学校の部誌作るのでてんやわんやしてて… 来週までには落ち着くのでそしたらまた書きます! (2022年8月3日 7時) (レス) id: 29de6c45fc (このIDを非表示/違反報告)
アルフ - すみません、、とても面白かったのですが、出演しているキャラクターの設定などはありますか?いきなり質問すみません! (2022年8月2日 10時) (レス) @page21 id: c16c5fa71a (このIDを非表示/違反報告)
和癒 - ここりどらすさん» 遅くなってしまい、申し訳ないです!! (2022年8月2日 8時) (レス) id: f702b299fb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ここりどらす&和癒 | 作者ホームページ:無し  
作成日時:2022年6月20日 19時

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