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「すみません、ちょっとトイレに」
そう言ってAは、人混みに姿を消した。
ぽつんと取り残されたここには、祭りから切り離されたような静寂しかない。
気まず…。いや気まず過ぎでしょ…
こっそりと隣を盗みみれば、ゾッとするような白さが、そこにあった。それはあまりにも眩くて、暗闇を見慣れた目にはよくしみる。
そっと視線を手元に戻そうとした時、あるものが目に入った。それは、真っ白な画用紙にほんの少しシミがあるような、つまりは大きな違和感だった。
嘘みたいな白をもつ彼の鼻に、焼きそばのソースがついていた。
え、まじで…?え、見間違いじゃ、ない、よな…?え、ちょ、ウケるんですけど…!ま、じわじわくる…!
笑いに堪える空気を察知したのか、白い顔がこちらに向く。その不審な顔が、焼きそばソースを更に引き立てる。
「…なに」
「お前、ついてるよ。鼻に、ほら」
どうやったらそこにつくんだよ。なんて呟きながら、あいつの鼻に手を伸ばした。
「──触るな!」
伸ばした手は、無限によって阻まれる。
素早く鼻を拭ったあいつの、空のよう瞳に睨まれた。鳥肌が立つほど美しくて、恐ろしい瞳に。
「…あぁ。その目、術式が見えるんだっけ?便利だよね。僕みたいなやつに引っかからないで済むって訳か」
未だ睨まれる。呪いの情報なんて一目見ただけで分かるだろうに、これ以上何を暴こうとするのか。目を逸らしたいが、怖くて出来ない。
「お前、苗字なんだっけ」
「えぇ、今更でしょ」
「あっそ」
手のひらは湿っていた。祭りの熱気はどこかへ消えてしまったようだ。
「兄ちゃんに変なことしたら、殺すから」
おいおい、子供がこんな目力しちゃまずいでしょ。
あぁ、と辛うじて返事したその声は掠れていて、まったく情けない。
「あと俺、お前嫌い」
「なんで?」
A、早く帰ってきてくれ。頼むから。
「…同族嫌悪、ってやつ」
「え、一体どこが同族なの?全然違うでしょ」
強いやつが。恵まれた奴が。俺と一緒にするなよ。
「いや、一緒だ」
六眼ってのは、心も見透かせるのか?なんでそんな、分かったような口を。
「でも、周りにバレないように隠してる。それが見ていて気持ち悪い」
「…大事な兄ちゃんの友達にそんなこと言っちゃっていいの?僕泣くよ?大人気もなく泣いちゃうよ?」
「…きも」
クソガキ、と心の中で零した。
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砂漠 - エレナさん» ありがとうございます!そう言って頂けるととても励みになります(●︎´▽︎`●︎)これからも楽しみに思っていただけるよう頑張るので、ぜひ最後までお付き合いください、、、(_ _*)) (2022年4月2日 11時) (レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
エレナ(プロフ) - この作品大好きです!続きが楽しみです! (2022年3月26日 21時) (レス) @page16 id: 806542db6b (このIDを非表示/違反報告)
砂漠 - お餅さん» まーたやりました。今日何回目ですか、私!!1個下のコメントはお餅さんへの返信です、、、失礼しました、、、お餅さん、コメントありがとうございました✨ (2022年1月1日 15時) (レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠 - コメントありがとうございます!ご期待に添えるよう、更新も頑張っていきたいと思います٩(ˊᗜˋ*)و最後までお兄ちゃんを応援してあげてください(_ _*)) (2022年1月1日 15時) (レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠 - あいすくりぃむとちょこれぃとさん» いや、私もタイトルとの温度差は感じていたんですよね、、、ですが地獄を見たというお言葉に笑ってしまいました😆最高の褒め言葉ありがとうございます!お兄ちゃんには幸せになって欲しいですね、、、頑張ります🔥 (2022年1月1日 15時) (レス) id: c817577711 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:砂漠 | 作成日時:2021年12月11日 11時