五条さん家のお兄ちゃん！ 続編【呪術廻戦】

43. ページ2

電話帳に登録してあるのは僅か数名で、その内二人からは電話がかかってくることは無い。だから、相手が誰かは分かっていた。


｢はい、Aです｣


｢あ、もしもし？｣


僕だけどさー、と久しぶりの声が電子機器から発せられる。飄々とした口調に変わりはなかった。


｢実家は大丈夫なの？なんか、家庭の事情で休むってセンセイが言ってたけど｣


彼の口から出た、センセイという言葉に、若干の違和感を覚えた。聞けば、なにかの拍子に｢ちゃんと先生と呼べ！｣と激怒されたらしく、それにちゃんと従っている彼は根は素直なのだろう。


そのクラスメイトの変化を知らないことは、俺に、それだけの期間高専を離れていたことを自覚させる。


｢そうそう、センセイにさ、家庭の事情ってなにって聞いたら、事情は事情だ。お前はさっさと掃除の罰を片付けろって言われて！
あんな、ただ広いだけの校舎を掃除するとか意味無くない？
ま、結局僕、やってないんだけどね！

でさー、なんで休んでたわけ？｣


一方的に話したあと、幾分か声を落として問いかける。その話し方は誰かに似ていた。


｢あぁ、実は、両親が死んだので｣


｢…は？｣


｢まあそれと、他にも色々重なっていて…
なのでもう少しは、学校をお休みに──｣



｢どこから入った。子鼠｣



最悪だ、と直感的に思った。同時に、それ以外を考えられなくなった。


最悪だ、最悪だ、最悪だ…


どうして周りに気を配らなかった？
どうしてこんな所まで出てきた？
どうして油断した？


自問自答の声しか聞こえなくなった。だから、通話終了ボタンを押す前にクラスメイトが言った言葉も、俺には聞こえていなかった。


｢…へえ、あの人たちって死ぬんだ｣

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