episode.57 ページ7
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ラウールside
阿部ちゃんが入院することになったと知ったあの日、突然思い出した事がある。
もう10年くらい前、僕が小学生だった頃の話。
一度だけ席が隣になった、ある女の子のことだ。
見た目には何も他の子と変わらないし、どちらかと言えばスラリとして華奢な子だったと思う。
あれくらいの年の子どもって言うことが残酷で、あの時もクラスの男の子が数人でその女の子に意地悪を言ってたんだ。
『おまえ保健室のにおいする！くっせー！』
僕は、俯いたままシクシクと泣いているその子に何もしてあげられなかったんだよね。
そんな場面を見た日から、なんとなくその子を気にかけるようになって気付いたことがある。
給食の前に必ず教室からいなくなって、しばらくして戻ってくる。
その子は決まって彼らの言う “ 保健室のにおい “ がした。
ある日の授業中、その子が床に鉛筆を落とした。
集中していたところだったけど、一向に拾われる気配のないことを不思議に思った僕は、ちらっと隣に目をやった。
その子はカタカタと不自然に手を震わせて苦しそうな表情をしていた。
慌てて先生を呼び、血相を変えて飛んできた先生によってその子は保健室に運び込まれた。
放課後、教室に戻ることなく帰宅するらしいその子に、荷物を届けるよう先生に頼まれた。
ドアを開けた先には、保健の先生と担任の先生、そしてその子のお母さんが立っていた。
担「あ、彼です、様子がおかしいと教えてくれたの。」
担任の先生がそう言うと、お母さんは僕の目線に合わせてしゃがみ、何度もありがとうねと繰り返した。
そして、彼女はある病気だということを教えてくれた。
さっき震えていたのはお昼に使った薬の副作用で、あのまま放っておいたらとても危険だったこと。
時々教室からいなくなるのは、『注射』を自分で打っているから。
また今日みたいなことがあったら助けてあげて欲しい、と。
結局それ以来隣の席になることも同じクラスになることもなく、卒業を機に学校も別になったから、彼女のことはすっかり忘れていた。
何をきっかけに掘り起こされたのか自分でもさっぱり分からないけど、あの時隣の席で震えていた彼女と、数ヶ月前に僕の隣で震えていた阿部ちゃんが、僕の中で完全に重なったんだ。
そして、食事の前にいなくなって、消毒のにおいを漂わせて戻ってくることも。
もし彼女と同じ病気なら、阿部ちゃんは…
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ストロベリー - 3早く読みたいです 頑張れ〜 (2023年4月2日 21時) (
レス) id: 78d64c6e31 (このIDを非表示/違反報告)
円周率 - いつも楽しく読まさせていただいています。3のほうも読みたいと思っているのですがパスワードを教えてもらうことは可能でしょうか？ (2023年3月8日 6時) (レス) id: 6ee190949a (このIDを非表示/違反報告)
みどり - 続き気になるので、楽しみに待ってます (2022年11月26日 1時) (レス) @page45 id: 1e919caffa (このIDを非表示/違反報告)
くろ(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。ちゃんと他のメンバーに支えられながらライブできるといいですね、、、 (2022年7月25日 1時) (レス) @page38 id: 436e54c814 (このIDを非表示/違反報告)
あお - このお話大好きです！更新待ってます、頑張ってください！ (2021年10月13日 15時) (レス) id: b9c7362213 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しぃ | 作成日時：2021年5月23日 22時
