episode.98 ページ48
*
岩本side
病室の前で声を掛けても返ってこなかった返事。
病み上がりだし寝てるのか？検査？お手洗い？
それくらいの気持ちでドアを開けて病室に足を踏み入れた先には、ベッドに横たわる阿部の姿。
休んでいるんじゃなく、倒れていた。
驚いて固まってる他のメンバーを押し退けてベッドサイドに駆け寄り阿部の肩を叩く。
「おい阿部！阿部？聞こえるか？」
呼び掛けに対して微かに声を発したけれど、ほぼ唸り声で焦点は合わない、俺らが目の前にいることは認識していないようだった。
どうしよう、どうしようって、焦りばかりが先走ってここが病院であることをすっかり忘れてしまっていたところに、情け無くも届く末っ子の一声。
ラ「岩本くん！ナースコール！」
慌てて辺りを見回す俺を他所に、すぐベッドサイドまで駆け寄って来たラウによってナースコールはもう押されていた。
“失礼します〜阿部さん、どうされました〜？”
穏やかにやって来た看護師さんも、阿部の姿を見て瞬時に状況を判断してか、目付きが変わった。
肩を叩かれて名前を呼ばれても、ついには何も反応しなくなった。
気が付いたら目の前にいた阿部の主治医の先生に、『そのまま声を掛け続けてあげて』そう言われるまで、自分が必死に阿部の名前を呼んでいたことにも気付かなかった。
すぐに先生が注射を打って点滴を繋いでくれたから、大事には至らないと言われたけど、血の気のない顔で横たわるメンバーの姿は、何を言われたって安心できるものではなかった。
しかも、すぐに意識も戻るはずだと言われたにも関わらず、疲労の蓄積も相まってかなかなか目を覚さない阿部。
みんな心配で堪らなくてずっとそばにいたいのは山々だったけど、各々次に控えた仕事があって、ひとりふたりと病室を後にしていった。
結局最後まで残れたのは、次の仕事が夕方からだった俺だけ。
看護師さんが30分後にまた来ますと言って置いていったタイマーを眺めながら、ようやく落ち着きを取り戻して未だ目を覚さない阿部の手を握った。
今日ほど深刻でないにしても、こんなことが日頃からあったのだろうか。
ふと、弱気な彼から本当の気持ちを引っ張り出したあの受験期の頃のことを思い出した。
俺は唯一の同い年。
多少強引に心に踏み込んだって大丈夫な気がした。
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ストロベリー - 3早く読みたいです 頑張れ〜 (2023年4月2日 21時) (
レス) id: 78d64c6e31 (このIDを非表示/違反報告)
円周率 - いつも楽しく読まさせていただいています。3のほうも読みたいと思っているのですがパスワードを教えてもらうことは可能でしょうか？ (2023年3月8日 6時) (レス) id: 6ee190949a (このIDを非表示/違反報告)
みどり - 続き気になるので、楽しみに待ってます (2022年11月26日 1時) (レス) @page45 id: 1e919caffa (このIDを非表示/違反報告)
くろ(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます。ちゃんと他のメンバーに支えられながらライブできるといいですね、、、 (2022年7月25日 1時) (レス) @page38 id: 436e54c814 (このIDを非表示/違反報告)
あお - このお話大好きです！更新待ってます、頑張ってください！ (2021年10月13日 15時) (レス) id: b9c7362213 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しぃ | 作成日時：2021年5月23日 22時
